毎年、5〜6月に米ロサンゼルスで開かれる世界最大のコンピューターゲームの見本市、E3の“檜舞台”から、任天堂が降りた。
1995年の第1回以来、欠かさず行ってきた大規模な記者発表会を、今年は取りやめたのだ。
独自のスタイルで差別化を図る任天堂・岩田聡社長の方針は、ともすれば日本の携帯電話メーカーのように、「ガラパゴス化」する危険性もはらむ。
「例年のような大規模プレゼンテーションを行わないことにいたしました」
岩田社長は今年のE3についてこう宣言した。
E3にはゲームメディア以外のあらゆる媒体が注目する。
任天堂の選択は、ライバルのソニーやMSに、戦わずして背中を見せたと言っても過言ではない、異例の判断だ。
代わりに6月11日、取引先の流通事業者を対象にした商談会と、
一部の米国ゲームメディアを招きソフトの体験会を小規模に開催する予定だというが、“内向き”なイメージは避けられない。
独自路線で差別化を図る任天堂の戦略は、情報発信以前にゲーム機で顕著だ。
タッチパネルと2つの画面を備え、立体表示機能を持たせた「ニンテンドー3DS」や、
コントローラーに液晶画面を組み込んだ「Wii U」は、ソニーやMSのゲーム機とは異なる特徴を持つ。
それだけに、ソフト開発にかかる負担は少なくない。
近年はソフト開発会社も収益確保のため、人気ソフトは複数メーカーのゲーム機やパソコン向けに発売するのが主流となっている。
だが、
任天堂のゲーム機はその特異性ゆえに、新たな開発の負担がかかるとしてソフト開発会社から避けられるケースもある。
先日もアメリカの大手ソフト会社が、任天堂Wii U向けのソフト開発は行わないと発言したと報じられた。
発言は撤回されたが、ガラパゴス化の兆候は見え始めている。
国内外で販売不振が指摘されるWii Uは、年末のクリスマス商戦でも苦戦が指摘される。
それでも任天堂の担当者は、こう強調する。
「任天堂はゲームのデファクト(スタンダード)を作ってきた。個性を出せば売れる」
新たな成長に向かうのか、進化の袋小路に落ち込むのか。経営再建に向け、任天堂は踊り場に立っている。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130528/wec13052807000000-n1.htm