>>52 赤坂憲雄氏 「東北という沃野 〜もうひとつの歴史と再生への祈り〜」〜G1サミット2012レポート〜
http://www.globis.jp/2002 私が20年前に東北を歩きはじめた頃、東北にはまだ戦前の記憶が鮮やかに残っていました。「男は
兵隊、女は女郎、百姓は米を、東京に貢ぎ物として差し出してきたのが東北だ」と。そんな言い方を
いろいろな人がしていたんです。私も聞き書きのなかで、そういった話をあちこちで聞いてきました。
しかし私が東北を本格的に歩きはじめた90年代初頭、バブルがちょうどはじけた頃には、もうそういっ
た内なる植民地的東北という時代は終わったんだと、どこかで感じていました。ところが今回震災が
起こってみると、「いや、東北はまだ『植民地』なのかもしれない」と感じた。もちろんカッコ付きです。
しかしいずれにしても、「植民地」なのかもしれないと思わざるを得ないような状況がいろいろなとこ
ろに転がっていました。
(中略)
それからこういう話もあります。戦前には…、申し訳ありませんけれども「女は女郎」と言われて身売
りというものがなされていた実態があります。貧しい家々が食えなくなってしまい娘たちを身売りする。
そういったことがたくさん行われていました。「今はもう、いくらなんでもそんなことないよな」と思いた
いところです。しかし震災のあと、私の周りにいるノンフィクションライターやジャーナリストたちにアン
テナを張っていましたら、やはり引っかかってきました。私の友人であるジャーナリストが怒りを抑え
ながら教えてくれました。東北から女性が、札幌のススキノや東京のいわゆる風俗にどんどん流れて
いるという話は以前から聞いていました。しかしそのとき聞いたのは、いわゆるアダルトビデオ業界が
活況を呈しているということでした。安いお金で女性たちを使うことができるから、それでバブルになっ
て皆が大喜びしているというんですね。「それを嬉しげに吹く奴がいた」というのです。