毎年春の入社式。私が短い講話をしたあと、質問コーナーを設けます。そのとき、
真っ先に「はいっ!」と手を挙げて質問をぶつけてくる新入社員がいます。
「会長、これについてはどうお考えでしょうか?」
若者らしく元気いっぱい。ハッスルしている様子がありありと見てとれます。ところが、
経験からいうと、そういうタイプの社員はまず伸びません。いまも何人かの顔が浮かん
できますが、残念ながら、そのうちかなりの者がワタミを去っています。結局、彼らがひけ
らかす「元気」は、内実をともなわない虚勢なのです。
心の底から「ぜひ聞いておきたい」ということがあるならいいのですが、たいていの
場合はそうではなく、元気よく質問している自分を周囲に見せたいだけなのです。
それは質問の中身を聞いていればわかります。
そういう人はプライドが高く、自分を実際以上に評価しがちです。しかし、現実の仕
事は地道な努力の積み重ねですから、どうしても自己評価とのずれが生じます。
すると「この会社は自分をちゃんと評価していない」と決めつけ、簡単に辞表を出してし
まいます。このように、頭の回転が速く敏感に行動する人は、目先の損得に左右され、
せっかくの成長の機会から降りてしまうことがあるのです。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/130302/ecd1303021701000-n1.htm