旧社会保険庁のずさんな管理で「消えた」年金記録五千九十五万件のうち、四割超の
二千二百二十二万件がなお持ち主不明となっている。政府はこれまでに三千五百六十九億円を
対策費に投入したが、全面解決のめどが立たないまま暗礁に乗り上げており、衆院選後の
政治情勢によっては取り組みがあいまいになる可能性もある。
保険料を納めたのに本人の記録に結び付いていない五千九十五万件の存在が発覚したのは
二〇〇七年。同年の参院選で当時の安倍政権は大敗を喫し、民主党はその勢いのまま
〇九年衆院選で政権交代を果たした。
民主党政権は記録回復を「国家プロジェクト」と位置付けて作業に取り掛かったものの、
今年九月時点で解明できたのは六割弱の二千八百七十三万件止まり。
うち千六百六十六万件(千三百九万人分)が基礎年金番号に統合済み、千二百七万件は
死亡者などの記録と判明した。ただ解明分の多くは国民の関心が高かった〇八年前後に集中、
ここ数年はペースが鈍っている。
残りの四割超は、日本年金機構が記録確認のために受給者・加入者に送った「ねんきん特別便」
で呼び掛けても回答がなかった九百二十四万件や、持ち主の手掛かりさえつかめない
九百六十二万件などで、解明は容易ではない。一〇年秋からはコンピューター上の記録と、
その「原簿」に当たる手書きの紙台帳の全件照合を進めているが、費用対効果の観点から
見直しを求める声が上がっている。
年金機構は来年一月末、インターネットで自分の記録を調査できる「ねんきんネット」を
活用した記録確認キャンペーンを始める。だが持ち主自身が自主的に記録を探す仕組みのため、
全件解明につながるのかは疑問だ。
*+*+ 東京新聞 +*+*
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012120902000101.html