《島の仕事がなくなってしまう》
今年5月、東シナ海に浮かぶ鹿児島県徳之島から一人の少女が1通の手紙を送った。
宛先は野田佳彦首相。島の基幹産業であるサトウキビ栽培が、環太平洋戦略的経
済連携協定(TPP)の交渉参加でなくなってしまうのではないか。最近、島全体が言いようの
ない不安に覆われている様子を自分なりの言葉でつづった。
手紙を書いたのは島内最大の集落、亀津地区に住む小学5年、幸山千尋さん(10)。
祖父はサトウキビ農家で、父、芳人さん(42)も製糖会社に勤務する。
「このままでは島が大変なことになる…」。テレビの国会中継を見ながら祖父と芳人さんが
頭を抱える姿に、千尋さんは居ても立ってもいられず、こっそり手紙を書いた。
「TPPのせいで、大好きな島の人たちが苦しむ姿をこれ以上見たくなかったから」
サトウキビから作られる砂糖は、日本がTPPに交渉参加した場合、取り扱いが注目される
重要品目の一つ。国産と外国産で品質格差がなく、コメや牛肉のようなブランド化が難しい。
関税が撤廃され国の財政支援がなければ「国産品は全滅する」(農林水産省)ともいわれ、
砂糖産業は“消滅”の危機におびえる。
■損失「3・4兆円」
サトウキビは台風や干(かん)魃(ばつ)に強く、南西諸島にはうってつけの作物とされる。
農家の約7割が栽培し、畜産を除く農業産出額の約4割を占めるが、その気候ゆえに代
替作物を見つけるのは難しい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121206/elc12120600340001-n1.htm http://sankei.jp.msn.com/images/news/121206/elc12120600340001-p1.jpg