★憂楽帳:レバ刺し考
今月から牛レバ刺しの販売が全面禁止になった。違反すれば2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科せられる。
レバ刺しが好物な我が身からすれば、焼き肉店に通う楽しみは半減だ。
発端は昨年、焼き肉チェーン店で起きたユッケ(牛肉の刺し身)による5人食中毒死事件。これを機に厚生労働省は生食用肉の安全調査を開始。
その結果、皮肉なことに、問題のユッケは衛生基準の厳格化だけで禁止は免れた。しかし、レバ刺しは禁止以外に有効な手立てはない、
との理由でご法度に。まさに「国民の生命、健康を守るため」の政府の“大英断”である。
個人的に不満はないと言ってしまえば、うそになるが「十分に予見できる危機」に対する迅速な政府の対応を批判するつもりはない。
しかし、である。レバ刺しの危険性と一律に論じることには、少々、飛躍があることも承知の上で、あえて問いたい。
ならば「大飯原発稼働再開」は一体、どういうスタンスに立った決断なのか、と。
「予見できる危機」より「今そこにある不都合」を優先したとしたなら、それこそ、レバ刺しに下した果敢な姿勢にケチがつきはしないか。【上田達浩】
毎日新聞 2012年07月02日 西部夕刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20120702ddg041070021000c.html