テレビ画面に「南相馬『高線量』黒い物質・コケ? 菌類? その正体は」というテロップが浮かび上がる。
2月23日、テレビ朝日『報道ステーション』を観た視聴者は、言いようのない不安にかられたに違いない。
同番組では、緊急時避難準備区域だった福島県南相馬市内の歩道の所々に黒い藻のようなものが発生し、
そこだけが高い放射線量を記録していると報じたのだ。
放送によれば、周辺の線量が1.2マイクロシーベルト/時(※)であるのに対し、
黒い藻のある場所は約2倍の2.4〜2.6マイクロ/時であるという。
そして、市民団体の要請を受けて現地調査したという神戸大学大学院・海事科学研究科の山内知也教授がコメント。
山内教授は、放射性物質は「福島第一原発由来のセシウム」であり、「今後、気温が上がると(藻が)乾燥してセシウムが風に舞い上がり、
家の中に入ることが心配」と結んだ。
番組ではこの事実がさも危険であるかのように報じたが、専門家たちから異論が噴出している。
放射線医学総合研究所緊急被ばく医療研究センターの杉浦紳之・センター長がいう。
「藻にセシウムが吸着されやすいのは事実ですが、周囲の2倍くらい線量率が高い場所はいくらでも存在する。
もしその藻が空中に舞い上がって拡散しても、2.6マイクロという数値は医療放射線や自然放射線と比較しても問題ないものです。
それをあたかも危険性が高いもののように扱い、不安を煽るように仕立てあげたという印象です」
※ベクレルとは物質が放射線を出す量、シーベルトは人間が被曝で被害を受ける量を表わす。
ベクレルをシーベルトに換算するには、摂取量と放射性物質ごとに設定された実効線量係数という数値をかける。
http://www.news-postseven.com/archives/20120306_92376.html