東京・大久保は今、日本で最も活気のある街の1つだろう。2010年春、新聞の企画連載のため、大久保に1カ月間住み込み取材をした。
ハングルの看板、鼻をつくスパイスの香り、スカーフで髪を隠して歩く女性――。
初めて大久保で暮らした私は国際色 豊かな街の賑わいにひき付けられた。
だが、久しぶりに足を運び、その変貌ぶりに驚いた。韓国の店が一気に増え、コリアンタウン化が急速に進んでいたのだ。
新陳代謝を繰り返すこの街のエネルギーが伝えるものは何か、乏しい頭を巡らしてみた。
JR新大久保駅を降りて大久保通りを東に進むと、見知らぬ店が次々に視界に入る。チョンガーネ(食材)、にっこりマッコリ(居酒屋)、
韓流GRANDPARK(韓流グッズ)...。昨年12月新装オープンしたばかりのテナントがすべて韓国系という大型ビル3棟が誇らしげに立つ。
2年前、新宿歌舞伎町に近い職安通りは大半が韓国の店だったが、大久保通りは日本のほか、中国、東南アジア系の店もあり、
韓国一色ではなかった。今、韓流の波は表通りを超えて住宅街にも押し寄せる。
大久保通りと職安通りをつなぐ細い路地にも韓国系の店が続々と出店、食事時は若い女性客で溢れ返り、通り抜けも困難なほど。
土日には大型バスが全国から観光客を連れてくる。約300といわれた韓国系店舗の数は現在、500を超えると見られている。
なぜ、コリアンタウン化が一気に進んだのか。韓流ブームの風が吹いているからだが、それだけではない。街の活気に隠れて表に出ないが、
日本の店の多くが売り上げ不振に喘いでいるのだ。大久保通りの商店街では最近、家具、紳士服、文房具などの日本人経営の店が相次いで閉店した。
「日本人が店仕舞いをすると、出店を希望するのは韓国人ばかり。韓国人同士の競争で賃貸料が釣り上がるバブル現象が起きている」
と話すのは街の事情に詳しい李承ミン・新大久保語学院院長だ。韓国系の店が増えるのは、商売をやめ韓国人に店舗を貸す日本人が増えているからにほかならない。
JR東日本が1月に発表した年末年始9日間の近距離切符の販売枚数はJR新大久保駅が前年比20%増。
伸び率で新宿、有楽町、上野、舞浜などの有力駅を大幅に上回った。
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