現在、放送中の山崎豊子原作のドラマ『運命の人』(TBS系)。 '71 (昭和46)年の沖縄返還協定の際、
実際に起きた「沖縄密約事件」がモデルになっている。当時のが、米国が支払うはずの土地の原状回復費用400万ドル
(当時の時価で12億円)を肩代わりする密約を交わした事実を示す極秘電文のコピー。
これを毎日新聞政治部の記者が、外務省の女性職員から「情を通じて」、つまり男女関係を利用して入手したと司法は判断した。
その後、コピーは社会党議員の手に渡り、その現物が国会で密約追及の材料に使われたことで、
記者と女性職員は国家公務員法違反容疑で逮捕されたのだ。
「取材はすべて教唆、つまりそそのかしを伴います。公共の利益のため、皆に知らせなくてはいけないという取材であればなおのこと、
教唆性、扇動性を持つ。それを少しでもやれば潰されるというのであれば、取材などできない。
官僚の言いなりになる。『情報をいただけないでしょうか』『ダメです』『では帰ります』などという取材はありえないのですから」
こう憤るのは、ドラマのモデルとなった元毎日新聞記者の西山太吉氏(80)だ。
'10年に外務省の有識者委員会が正式に認めた通り密約は存在した(西山氏は密約文書の開示を求めた裁判で上告中)。
政権が「不都合な真実」を隠した事実が判明したのに、今再び、西山氏のような取材者が逮捕される可能性が高まっている。
野田佳彦内閣が法案提出に向けて準備を進める「秘密保全法案」が成立すれば、
政府が「特別秘密」と定めた情報について、内部告発しても、取材しても、報道をしても、
懲役5年以下または10年以下という処罰の対象になるというのだ。
この法案の問題点に、政府が何を「特別秘密」とするか、がある。上智大学文学部新聞学科の田島泰彦教授が解説する。
「防衛、外交に関する機密の他、『公共の安全と秩序の維持』まで含んでいます。
これは警察情報を意味するだけでなく、原発に関する事故や問題も含むことになる。しかも単に情報が秘匿されるだけでなく、
メディアの関係者ばかりか、市民団体の調査研究という行為までも処罰対象の射程に置かれてしまうのです」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31871 >>2以降へ続く