★株主資本主義が日本のIT産業を変える(抜粋) 6
これまでの日本企業は、従業員をいわば「タコ部屋」に閉じ込めることによってコントロール
してきたが、労働市場が流動化した現在では、このやり方は通用しない。それは日本の
ITゼネコンが「きつい、厳しい、帰れない」職場として嫌われ、IT企業の9割が人手不足に
悩んでいる現状をみれば明らかだろう。
IT産業が中核のビジネスになる時代に、人材を引き付けるのは、「面白い仕事」だ。だから今、
必要なのは、株主資本主義によってプロジェクトを柔軟に組み替えるとともに、新しい
「面白い会社」が生まれるようにファイナンスの仕組みを変えることだ。
昔からある企業であっても、トップの決断さえあれば変革は可能だ。HD DVDから撤退した際、
東芝の西田厚聰社長はウォールストリート・ジャーナルから「この失敗で、東芝はリスク回避的に
なるのでは?」という質問に、「リスクを取らなければ前進はありません。状況は常に変わるので、
状況に合わせて変化しなければ、当社に未来はありません」と答えていた。その後の半導体
ビジネスの不調などから、西田社長を批判するメディアも出てきているが、だからといってIT企業の
トップ達が変革を先送りしてよいということにはなるまい。世代交代によって西田社長のような
経営者がもっと増えれば、日本のIT産業もついに変わるかもしれない。
池田信夫(いけだ のぶお)
上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)
日経BPnet 経営とIT新潮流 神髄を語る
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081224/321939/?ST=biz_shinzui&P=1