昨年12月20日、政府の安全保障会議は、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)にアメリカが主体でイギリスなど
8ヵ国も共同開発するステルス機「F−35」(ロッキード・マーチン社製)を採用することを決めた。
だが、この決定には多くの疑問の声が寄せられている。1機約99億円(将来的には整備費などを含め総額1.6兆円で42機を調達する予定)
という高額さもさることながら、そもそも「F−35」はいまだ開発途中なのである。アメリカは過去最高のステルス性能を謳(うた)っているが、
それすら本当に実現できるか怪しい。軍事評論家の谷三郎氏がこう指摘する。
「昨年の対リビア作戦で、FA−18(現行の米軍主力機の1つ)やユーロファイターは高い空戦能力を証明しました。
ところが、F−35は完成機すら存在しない。どうやって採点したのでしょう? 現在の中期防衛力整備計画では、
2016年度(2017年3月まで)にFXを4機そろえることになっていますが、F−35の開発がそこに間に合わないのはほぼ確実です」
日本がF−35の導入を決めたのは、ロシアが「スホーイT−50」、中国が「殲20」といった次世代ステルス機の開発を進めている現状で、
空の防衛を強化するためとも言われる。だが、導入時期すら不透明な現在、1.6兆円もの高額投資を決めた必然性はあったのか。
『飛翔への挑戦 国産航空機開発に賭ける技術者たち』(新潮社)などの著作がある航空アナリストの前間孝則氏は、
F−35の導入に際して日本の置かれている現状を、こう指摘する。
「アメリカの次に開発費を出しているイギリスですら、F−35に関してはどこまで技術を開示してもらえるかわからないし、
納期がいつになるかもわからない。共同開発国ですらない日本が、技術の開示や自国でのライセンス生産を求めるのは相当難しい。
しかも、もう『買う』と宣言してしまったわけですから、もはや交渉の余地もないと思います」
だとすれば、F−35導入までの期間は、現在主力のF−15や、2000年から部隊配備が開始された日米共同開発のF−2に頼るしかない。
しかし、F−15は米軍でも姿を消しつつある旧世代機。日本が開発に関わったF−2も、調達過程でコストの肥大化が問題視されたため、
他国の最新鋭機に対抗できるような改良を加える予算を計上するのは難しい。
http://wpb.shueisha.co.jp/2012/01/20/9261/