★韓国重視戦略につまずき=「歴史」前面、かすむ未来志向−日韓首脳会談
・18日の日韓首脳会談で、李明博大統領は旧日本軍の従軍慰安婦問題を正面から
取り上げ、野田佳彦首相に具体的対応を迫った。首相は「決着済み」と拒否。
歴史問題の難しさが改めて浮き彫りとなり、目指す「未来志向の関係」はかすんだ。
首相は軍事・経済両面で台頭する中国を念頭に、価値観を共有する米韓両国との
関係強化をアジア外交戦略の柱に据えてきたが、想定外の展開となった。
「日韓の緊密な協力は非常に重要だ」。首相が中断している経済連携協定(EPA)
交渉再開を促すと、大統領は「経済の前に歴史の懸案だ」と言い放った。
今回の大統領来日は、日本側が1年以上にわたり働き掛けてようやく実現したものだ。
中国の台頭を踏まえ、日本は米国との安保協力の指針である共通戦略目標を6月に
改定した際、韓国との防衛協力強化を初めて明記。韓国重視をこれまで以上に
鮮明にした。
李大統領を歴代で「最も親日的」と捉え、関係強化を急いだ側面もある。昨年8月には
菅直人首相(当時)が日韓併合100年に当たって「反省とおわび」を表明。野田首相も
9月の就任後、国際会議出席を除いて初の外遊先に韓国を選んだ。その後、日本統治
時代に持ち出された「朝鮮王朝儀軌(ぎき)」引き渡しも実現した。
こうした努力に冷や水を浴びせるような大統領の厳しい対応に、日本政府関係者は「あらゆる
布石を打ってきたが、全くの空振りだ」と落胆を隠せない。
首相は慰安婦問題について、決着済みとの立場を堅持する一方、「人道的見地から知恵を
絞っていこう」とも呼び掛けた。村山内閣が1995年に設立した「女性のためのアジア
平和国民基金」のような融和策が念頭にあるとみられる。しかし、韓国側の主張の背景に
元慰安婦の賠償請求がある以上、「根本的な問題解決にはならない」(政府関係者)との
見方が強い。
会談を終えた首相は記者団に「大局観に立った未来志向の意見交換ができた」と平静を装った。
しかし、外務省の政務三役の一人は「来年の大統領選が終わるまではこのままでいくだろう」と
対立長期化に懸念を示した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011121800157