【社会】就職難で増加、「ソクドク」新人弁護士

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598名無しさん@12周年
愛を要するがゆえに自尊をも要する青春の頃において、服装の賤(いや)しいゆえに
あざけられ、貧しいゆえに冷笑されるのを、彼は感じた。いかめしい矜持(きょうじ)に
胸のふくれ上がるのを覚ゆる青年時代において、彼は一度ならず穴のあいた自分の靴の
上に目を落としては、困窮の不正なる恥辱と痛切なる赤面とを知った。それは驚くべき
恐るべき試練であって、それを受くる時、弱き者は賤劣(せんれつ)となり強き者は
崇高となる。運命があるいは賤夫をあるいは半神を得んと欲する時、人を投ずる坩堝
(るつぼ)である。
 なぜなれば、かえって小さな奮闘のうちにこそ多くの偉大なる行為がなされる。窮乏と
汚行との必然の侵入に対して、影のうちに一歩一歩身をまもる執拗(しつよう)な
人知れぬ勇気があるものである。何人にも見られず、何らの誉れも報いられず、何らの
歓呼のラッパにも迎えられぬ、気高い秘密な勝利があるものである。生活、不幸、孤立、
放棄、貧困、などは皆一つの戦場であり、またその英雄がある。それは往々にして、
高名なる英雄よりもなお偉大なる人知れぬ英雄である。
 堅実にして稀有(けう)なる性格がかくしてつくり出さるる。ほとんど常に残忍なる
継母である困窮は時として真の母となる。窮乏は魂と精神との力を産み出す。窮迫は
豪胆の乳母(うば)となる。不幸は大人物のためによき乳となる。
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