「一刻も早く自宅で暮らしたい住民の心情を全く理解していない」。
民主党の原発事故影響対策プロジェクトチームが東京電力福島第一原発周辺の土地の
国有化を求める提言をまとめた3日、原発が立地する大熊、双葉両町の避難者に怒りが渦巻いた。
原発から3キロ圏内の町民からは「国有化を議論する前に、まず一時帰宅を実現すべきだ」と厳しい指摘も。
被災者を置き去りにした提言に、首長にも戸惑いが広がった。
「安易な買い上げ策には反対だ。土地の除染に力を入れ、地元に何としても帰らせてほしい」。
猪苗代町のホテルに避難している双葉町の農業中里範瑞さん(66)は民主党プロジェクトチームの国有化の提言に怒りをあらわにした。
原発から自宅までは約7キロ。一刻も早く自宅に戻り、農業を再開したいと願っている。
大熊町の夫沢一区長の木幡昭重さん(73)は自宅が原発から2キロにあり、
いまだに一時帰宅ができておらず、何も持ち出せていない。「思い出の品はお金に替えられない。
まずは一時帰宅を実現してから国有化の議論をすべきだ」と注文を付けた。
大熊町が6月に実施した町民アンケートでは、「戻るために最大何年くらい待てるか」の質問に、51%が2年以内と答えている。
「先祖代々の土地を守りたい」「地元に愛着がある」…。
大熊町行政区長会長を務め、現在、会津若松市の仮設住宅で暮らす農業仲野孝男さん(66)は郷土愛に冷水を
浴びせ掛ける提言に「いくら説明されても、納得できない人は多いだろう」と町民の心情を代弁した。
一方、原発から5キロに自宅があり、猪苗代町のホテルに避難している双葉町の無職讃岐孝男さん(66)は
「戻ることができないなら買い上げてもらうことも一つの案とは思う」と一定の理解を示す。
その上で「事故収束に時間がかかり過ぎている。どちらにしても、今のこの状況を早く変えてほしい」と先の見えない現状に不満を募らせた。
大熊町の製造業岩本哲児さん(36)は家族4人でいわき市に避難し、事業を再開している。
自宅は福島第一原発から約7キロにある。「小さい子どももおり、戻れるとは思っていないが、
国有化する距離の線引きなど住民が納得する形になるのか」と疑問を投げ掛けた。
福島民報
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