地上デジタル放送(地デジ)に完全移行した24日、10万世帯前後と見られた地デジ未対応世帯からは多くの相談が殺到した。
中には、役所に設けられた臨時相談コーナーで、チューナーを受け取り安堵(あんど)する住民の姿も見られた。
一方、経済的な事情からチューナーも購入できず、携帯電話のワンセグを頼りにする世帯も。
今後、テレビを見られない世帯をどのように救済するか、課題も残されている。
◇生活に余裕なし…母子家庭の女性
東京都世田谷区のアパートで、中学2年の長男(14)と2人で暮らす会社員の女性(39)は、地デジに対応できないまま、この日を迎えた。
「息子の服やカバンなど買うべきものはほかにたくさんある。今は1円でも惜しい」と話し、携帯電話のワンセグの小さな画面が頼りだ。
10年前に離婚。年収は300万円程度あるが、アパートの敷金・礼金の分割払いを含め家賃だけで月7万2000円が消える。
「生活費や学費を払うので精いっぱいで、昨年は長男の夏用制服を買うこともできなかった」と窮状を訴える。まして、テレビを買い替える余裕はない。
家にあるのは、9年ほど前に買ったアナログテレビ1台。昨年3月に引っ越してきたアパートは、デジタル対応のUHFアンテナが付いているが、
地デジを見るにはテレビも地デジ対応にしないといけないのは分かっていた。
代わりになるのが携帯電話だ。母子で肩を寄せ合ってワンセグで映画を見ることもあるが、
長男からは「番組を一つ見るだけで目が疲れる」と言われた。小さな画面に物足りなさも感じる。(
>>2-3へ続く)
毎日新聞 2011年7月24日 20時44分(最終更新 7月24日 21時21分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110725k0000m040052000c.html