★歴史に刻まれたルーピー・ペテン師論争
今さら民主党政権の「言った、言わない」を取り上げることは非生産的だとの指摘も
当然あるだろう。東電福島第一原発1号機の注水問題でも「言った、言わない」が繰り
返されたばかり。それから数日しかたたないうちに起きた不信任騒動だったからだ。
それでも、同じ党内の前首相が後任の現首相に対し「ペテン師、詐欺師」呼ばわりす
る事態は、やはり尋常ではない。歴史的ページェントと言っていい。
「(可決される公算が大きい)不信任案が出る直前には『辞める』と言い、否決され
たら『辞めない』と言う。こんなペテン師まがいのことを一国の首相がしてはいけな
い。当たり前の話で、人間としての基本にもとる行為だ」
鳩山由紀夫前首相は自民、公明など野党3党が共同提出した内閣不信任決議案が否決
された翌3日、都内の自宅で菅氏の「背信」を、こう詰(なじ)った。「詐欺師まが
い」とまで罵(ののし)ったが、大方の国民にとって首相時代とは見違えるような説得
力ある言葉だったろう。もっとも、ご記憶の方も多いだろうが、批判している当人も首
相就任前は「首相を退いたら議員を辞める」と言い、意に反して短命政権で終わると
「やっぱり辞めるのやめた」と前言を翻した前歴の持ち主なのだ。
今回の何が歴史的かといえば、当代の政治指導者の論争が、時代の断面を見事に切り
出して見せるからだ。吉田茂首相(当時)のサンフランシスコ条約をめぐる「講和論
争」、中曽根康弘首相(同)と石橋政嗣社会党委員長との「非武装中立論争」。いずれ
も冷戦の突入期と、崩壊の前段階における日本の進路について保革両陣営が真正面から
ぶつかり合ったものだ。
(続く)
■ソース(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110604/plc11060418010010-n1.htm