「想定外」を16年前に警告 福島第1で故高木さん論文
福島第1原発事故を受け、2000年に死去した「原子力資料情報室」元代表の高木仁三郎さんが
阪神大震災後に発表した論文がネット上で話題となっている。政府や電力会社の決まり文句
となっている「想定外」という姿勢に当時から警鐘を鳴らし、福島第1原発の危険性を指摘する“予言”の
ような内容。関係者は「今こそ読まれるべきだ」と話している。
論文は日本物理学会誌の1995年10月号に掲載された「核施設と非常事態―地震対策の検証
を中心に―」でA4判4ページ。阪神大震災のデータなどを元に、原発の耐震設計や老朽化、活断層など
の問題を論じた上で、国や電力会社を「『原発は地震で壊れない』ことを前提にしてしまっているため、
そこから先に一歩も進まず、地震時の緊急対策を考えようとしない」と批判する。
阪神大震災は核施設の「緊急事態」への備えのなさにも警告を発しているとし、その事態の
一つとして「地震とともに津波に襲われたとき」にも言及。「そのような事態を想定して
原発の安全や防災対策を論じることは、『想定不適当』とか『ためにする議論』として避けられてきた。
しかし(中略)考えうるあらゆる想定をして対策を考えていくことが、むしろ冷静で現実的な
態度と思われる」と指摘している。
一方、大地震が直撃した際に「想像を絶する」事態となる核施設集中立地点として「福島県浜通り」を、廃炉への具体的議論が必要な「一番気になる老朽化原発」に福島第1原発を挙げている。
論文はネット上のデータベースで一般公開され、ツイッターでも「こういう警鐘は無視されて
きたんだろうな」などと話題に。原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「短い文章の中に今起きている
ことの問題がすべて詰まっており、あらためて読んで驚いた。過去のこととしてではなく、今こそ
その言葉に耳を傾けるべきだ」としている。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011050701000177.html