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>>1のつづき)
「Jヴィレッジで作業員は元請けの企業ごとにバスを乗り換えるのですが、私の親会社である
大手電機メーカーの社員の態度はひどく高圧的でした。私たちが到着するなり、『今来た人たちは東電?
東芝? 日立?』と乱暴な口調で詰問するのです。?然としていると、彼は『さっさと防護服に着替えて!』と
まくし立ててきます。さすがに腹が立って、私は彼に詰め寄りました。『これから危険な場所に行く人間に対し、
その態度はないんじゃないですか。どのバスに乗ればいいのか知りたいのは俺たちなんだから、もっと
言い方があるでしょう』と。すると彼は謝るどころか無言で歩いて数mほど離れたかと思うと、こう言い放ったんです。
『悪かったな。お前ら、死ね!』
被曝覚悟で仕事にあたる作業員に対し、この暴言は許せません。私たちは『こんな屈辱を受けてまで
危険にさらされたくない』と、そのまま乗ってきたバスで帰ろうとしました。すると暴言を吐いた社員の
上司が飛んできて、『帰られては、今後の作業員の動員に支障をきたす。何とか残ってください』と何度も謝ります。
暴言社員も上司に『来てくれた人に対して何を考えているんだ、慎め!』と激しく叱責され謝罪したので、私たちは
帰ることを思いとどまり、元請け会社の用意したバスに乗り込んだんです」
バスが福島第一原発から20km圏内にある富岡町に入った時点で、A氏たちはフィルター付きマスクを着用。
福島第一原発に到着すると、さっそく機材を用意して、元請け会社の指示通りに1号機へ向かった。そこで
見たあまりの惨状に、A氏は我が目を疑ったという。
「見慣れた福島第一原発の様相は、半月ぶりに訪れると一変していました・・・。敷地内の重油タンクは
津波のために大きく凹み、4号機近くにあった重量200tのクレーン車も踏み潰されたようにぐしゃぐしゃに
壊れていたんです。戦場のような光景です。周囲には消防車が不規則に停まり、散在したホースが
行く手を遮っています。1号機へ向かうにも、大きく迂回せざるを得ませんでした」
ようやく作業に取り掛かったA氏だが、妙なことに気づく。パラパラと、白い小さな物体が
降り注いでいるのだ。(
>>3-10につづく)