「巨大津波が来ます」。東日本大震災発生直後、仙台市沿岸部の交差点で懸命に避難誘導する警察官の姿を、車で通り掛かった女性が覚えていた。
女性は津波から逃れ、2日後に家族と再会できた。
警察官は6日後、遺体で見つかった。
3月11日、仙台市若林区。勤務先で地震に遭った岩沼市の会社員鈴木和美さん(26)は、保育所に預けた長男(1)を迎えに、海岸から約1キロ内陸側の県道を南下していた。
「ラジオはつけていましたが、津波を甘く見ていて、いつもの道を通っていました」
荒浜交差点に差し掛かると、交通整理の棒を回す年配の警察官に気付いた。
「内陸へ逃げて」と声を張り上げていた。
前の車は次々と内陸へ向かう。
まっすぐ保育所に向かいたかったが、必死の形相に突き動かされてハンドルを切った。
交差点から西約3キロにある仙台東部道路にたどり着き、携帯電話や貴重品を残して車を乗り捨てた。
のり面を上がった時、津波が車を押し流していった。
鈴木さんに声をかけたのは、仙台南署荒井交番の警部の渡辺武彦さん(58)=2階級特進=だった。
地震発生後、受け持ち区域の警戒に出動し、荒浜交差点で署員や同僚と計4人で避難誘導に当たっていた。
県警によると、署員の1人が迫り来る高さ10メートルの津波に気付いてパトカーで避難したが、渡辺さんの姿は見当たらなかった。
遺体は17日朝、交差点から西へ100メートル離れた民家の玄関先で見つかった。
鈴木さんは、家族と離れたまま避難所などで2晩を過ごし、13日、柴田町の実家で夫(26)や長男らと再会した。
その後も毎日、誘導した警察官のことを気にかけていたが、県警のホームページで殉職を知った。
鈴木さんは今月3日、花を手に交番を訪れた。
「渡辺さんがいたから今の私がいる。いてもたってもいられなかった」。
花は、同署を通じて渡辺さんの妹の大友郁子さん(56)=仙台市=に届けられた。
大友さんは「最後の最後まで職務を果たし、一人でも多くの命を助けた兄の行動は立派で誇りに思います」と話したという。
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