【都知事選】 エネルギー政策で渡邉美樹氏「コスト、時間がかかっても脱原発」、東国原英夫氏「太陽光、バイオエネルギーなど転換」★5

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45【原発を即時停止したら、エネルギー価格の上昇と多くの雇用が失われる】

今後、日本で「すべての原発の即時停止と廃炉」を実行したら、電力の27%が失われる。
いま首都圏は電力が1割ほど不足しただけで大混乱だが、それを遥かに上回る混乱が全国に発生する。

原発を止める代わりに「できるだけエネルギーを使わないライフスタイルへの国民的シフト」や
「首都機能の全国への分散」などの主張は、それを誰がどうやって実行するのか。

民主主義国家が、人々に今より貧しい生活を強制することはできない。
それが人々の善意だけでできると考えているとすれば、兵站を軽視した帝国陸軍より甘い。

太陽光などの再生可能エネルギーを開発することは重要だが、それは原発の代わりにはならない。
石油火力は、原油価格が上昇する中では高価なエネルギーになる。
残された選択は石炭火力と天然ガスだが、化石燃料に依存するリスクは大きい。
今でも欧米の2倍以上の電気料金がこれ以上高くなったら、日本で製造業は成り立たなくなるだろう。

よくも悪くも、日本はこれから原発を捨てざるをえないだろう。
そこに待っているのは「エコな生活」ではなく、今の首都圏のようなエネルギー不足が恒常化し、
産業競争力が失われ、マイナス成長の続く世界である。
国民がそれを望むのであればやむをえないが、彼らはいったん得た豊かな生活を捨てないだろう。
『潤沢で安いエネルギーとそのリスクは、トレードオフになっている』のだ。

むしろ今回の事故ではっきりしたのは、経済性を無視したエコ幻想が破産したということである。
原子力への依存度を下げるためには、民主党政権の「温室効果ガス25%削減」という国際公約を撤回し、
京都議定書を破棄してCO2排出量は多いが電力単価が低く埋蔵量の多い石炭火力を増やす事が現実的だ。

それでもエネルギー価格の上昇は避けられない。製造業では今後、多くの雇用が失われるだろう。
労働力をサービス業に移転するためには、20年以上、積み残してきた労働市場の流動化や
資本市場による産業再編などの構造改革をこれ以上、先送りすることはできない。
「エネルギーを使わないライフスタイル」への転換は統制経済ではなく、市場経済によって行なうしかない。
〔上武大学教授、SBI大学院大学教授 池田 信夫〕http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51692200.html