政府は東京電力福島第1原発事故で、原子炉建屋を特殊シートで遮蔽する工事を行う方針を固め、
東電に可否を検討するよう指示した。複数の政府関係者が3日、明らかにした。議論の過程で
原子力専門家は「放射性物質の拡散を抑える効果は限定的で、リスクの方が大きい」と反対したが、
政治判断で押し切った。措置の是非をめぐり議論を呼びそうだ。
関係者によると、特殊シートの使用は、細野豪志首相補佐官の下に設けられた原発対策チームのうち、
馬淵澄夫首相補佐官らが率いるチームで議論。
高さ約45メートルの建屋の周りに骨組みを建ててシートを張り巡らせ、内部に観測機器を設置する
構想で、ゼネコンが提案したという。1〜4号機すべてで実行した場合、1〜2カ月の工期で費用は
約800億円と見積もられている。
原子炉や使用済み核燃料プールの温度が安定していない建屋を遮蔽すれば、新たな放射性物質の拡散
を抑える効果が期待できる。ただ専門家によると、建屋内から出ている放射性物質の量は、爆発で飛散
したがれきに比べて少なく、「遮蔽は急務でない」という。逆にシートで密閉すれば内部の放射線量が
上昇して作業が困難になる上、内圧が上昇して再爆発を起こす危険性も指摘されている。
専門家の間では否定的な見解が多かったが、政府側が東電への検討指示に踏み切ったという。
政府関係者の一人は「原発の専門知識がないゼネコンの発案を、政治家と経営陣が採用した。無残な
原発の姿を覆い隠して安心感を与えようという気休めだ」と批判している。
▽47NEWS
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