【原発問題】栃木産ホウレンソウとかき菜から放射性物質 ヨウ素、セシウムを検出 3/20 21:51★2
元放射線医学研究所研究官・医学博士・崎山佐知子
http://www.ustream.tv/recorded/13453891 ・被爆の経路は二つ
@外部被爆:(放射線源が体の外にある場合)、体の外側から放射線を浴びること。
例えば、胸部レントゲンは、体の外側からX線を浴びるので、外部被爆
A内部被爆:(放射線源が体内にある場合)、体の内側から放射線をあびること。
いま福島原発事故で原子炉から放射性物質が大量に外部に放出されている。
「ヨウ素131」という言葉がよく出てくるが、これは放射性物質で「ベーター線」という電子を出す。
それは空気とか食べ物、飲み物と一緒に体の中に入って、甲状腺に溜まる。
なぜ甲状腺に溜まるのか?
甲状腺は甲状腺ホルモンという体になくてはならぬホルモンを作るが、そのホルモンを作るためにはヨウ素が必須である。
だからヨウ素が体に入ってくると、必ず甲状腺は取り込む。そのため、甲状腺に放射性ヨウ素が溜まる。
そこで、甲状腺に付着して溜まり、体の中からベーター線を(超至近距離から放って)被爆する。
いま3号炉はプルサーマルなので、「プルトニウム」が燃料の中にたくさん入っている。プルトニウムは「α線」を出す。
アルファ線はヘリウムの原子核ですごく重いし、+電気を帯びており、遠くには飛ばない。
だから、体の外にプルトニウムがある場合はよい(飛程距離(※)が短いから放射線が貫通しないし、自然に大気中に舞い上がって吸い込むリスクは低い)が、
食べ物や空気とともに体の中に入ると、体の中は周りは細胞だらけなので、いくら飛程距離(※)が短くても
(※、アルファ線など放射線が[生物の]組織内で飛べる距離(=を”飛程距離”といいます)はせいぜい30から40ミクロンです。
これは細胞にすると3個から4個を通過するにすぎません。
だから、体外の空気中にある限り、外部から体の組織を貫通して内部へダメージを与えるものではありません)
細胞を傷つける。
そして、同じ線量(Sv)でも、アルファ線は、他のベーター線・X線・ガンマ線と比べて、(細胞を傷つける力は)20倍強い。
そのため、いったんアルファ線が体の中に取り込まれると、非常に危険なのである。
(1)
続き(2)
・放射性物質と放射線
光を出す:光=放射線で、光を出すランプ=放射性物質(放射"能")、という関係
放射線を出す:放射性物質という物質が、放射線(光のようなもの)を出す、という関係
かつての「放射"能"」=現在の「放射性物質」
キューリー夫人がラジウムを分離して放射線が出ていることを発見したが、
放射線を出す能力という意味で「放射能」という言葉で表わしたが、今は「放射性物質」という。
福島からヨウ素131(I131)という放射性元素が飛んで来るとき、
「I131は放射性物質」であり、「ここから放射線が出ている」と表現する。
・「放射性ヨウ素(I131)の吸収と甲状腺への蓄積」の経路
放射性ヨウ素は空気や食べ物から、体内に入る。(体内に入ると、肺や消化管から取り込まれ、吸収量の30%〜10%が甲状腺へ集積する。)
空気から入った場合は、気管支や肺から血中に移行する。
食べ物から入った場合は、胃や腸から吸収されて血管に入る。
そして血管に取り込まれたもの(吸収量)の30%〜10%が甲状腺へ集積する。
それ以外は、尿や便から排泄される(大部分は尿から排泄され、2-3%が消化管から便となり排泄)。
・「(非放射性)ヨウ素剤の効果と配布基準・場所」
自然界にふつうにあるヨウ素は「安定ヨウ素」(放射線が無い、非放射性ヨウ素)と言うが、
それを血液の中にたくさん取り込んでおけば、放射性ヨウ素が体内に入ってきても薄めることができる。
そのために、ヨウ素剤を飲む。
●ヨウ素剤を飲むタイミングだが(ヨウ素剤はいつ飲むのが効果的か?)
「放射性要素が体内に取り込まれる、
o24時間前から(か24時間前ジャスト) 93%阻止
o2時間後では 80%阻止
o8時間後では 40%阻止
x24時間後では 7%阻止(もうほとんど阻止能力が無くなる)」
放射性ヨウ素が体内に入ってくると予想されたら、なるべく早めにヨウ素剤を飲む、というのが一番効果的
続き(2)
●配布基準(いつ配布するか)
「等価線量(甲状腺の線量)が100ミリシーベルトになると予測されたとき」(日、仏など、大人子供一律)
ただ、この100ミリシーベルトというのはかなり高い数値
WHO勧告では、子供はとくに成長ホルモンが活発で細胞分裂が盛んなため、甲状腺の(ホルモンを作る細胞分裂も)活発なため放射線に対する感受性が高いから、
「子供は等価線量が10ミリシーベルトになると予測されたらヨウ素剤を飲ませること」を勧告している。
ベルギーなどでも、10ミリシーベルト(子供に対して)を採用している。
しかしだからといって、毎日毎日「ヨウ素剤」(安定ヨウ素)を飲むと、過剰にヨウ素が取り込まれて、
甲状腺機能を傷害するので、毎日飲むことは止めたほうが良い。
日本は、「1錠飲ませる」、しかし、もしそれが足りず「2錠目が必要なときは(そこに留まらず)避難を優先する」という指針をとる。
・いったん体に取り込まれた放射性ヨウ素がどれぐらい体内で続くか(半減期:ほぼ半分になるまで)
物理的半減期(自然界) 体内の半減期(生物的半減期)
ヨウ素131 8日 7.5日 ☆
セシウム137 30.2年 109日
プルトニウム239 24100年(2万4千百年) 一生
ストロンチウム90 28.9年 18年
☆7.5日 が体内の半減期なので、この間にもう一錠「ヨウ素剤」を飲むと、体内の血中に安定ヨウ素の濃度を保つことができると思う。
続き(4)
・ヨウ素剤の服用量
年齢 ヨウ素量 ヨウ化カリウム量 錠剤
新生児 12.5mg(約1/3) 16.3mg KI水溶液(ヨウ化カリウムの粉末を水に溶かす)
生後1ヶ月から3歳未満 25mg 32.5mg KI水溶液
3歳から13歳未満 38mg(1錠) 50mg 1
13歳から40歳未満 100mg(76mg) 130mg 2
40歳以上 投与しない
ヨウ素剤だが、放射性ヨウ素の取り込みは阻止するが、他の放射性物質に対しては全く効果なし。
だから、ヨウ素剤飲んでるから、プルトニウム、ストロンチウムが体内に入っても大丈夫ということはまったくない。
だから、放射性物質で人が唯一防御できるのは「ヨウ素剤」だけで、甲状腺ガンを防ぐそれだけ。
40歳以上の場合は、(原則として投与しないが)甲状腺の等価線量が5Sv以上になると予測された場合に出す
(40歳以上は甲状腺の発ガンのリスクが少ないと考えられているためである。しかし、
5Svの高い放射線が甲状腺に入ると、甲状腺機能を破壊するので、それを防ぐため与える。)
●1ミリシーベルトとは?
私たちの体は60兆個ぐらいの細胞でできてる。その細胞の核の中に細胞設計図であるDNAがある。
そのDNAに平均して1本の線が通る。ヨウ素の場合だとベーター線が通る。それが1ミリシーベルト。
日本の場合、公衆(医療関係者、原発関係者などのぞく一般国民)の1年間の限度線量が1ミリシーベルト。
1年間で1ミリシーベルトというのは、1年間かかって体の(すべての)細胞に1本線が通るということ。
10ミリシーベルト浴びると、10本線が通るのだが、
10本通ったときにできる傷害と1本通ったときにできる傷害は、質は同じ(放射線1本ごとの強さは同じだから)。同じ傷害が10倍になる。
続き(5)
●放射線がDNAに当たると?
糖鎖があって、リン酸結合があって、塩基がでている。
この塩基の並び方によって、アミノ酸が決まる。
アミノ酸がどういう順序で決まるかという情報を、DNAが持つ。
これは弱い化学結合でできているが、
これに比べて、X線などは1万五千倍〜二万倍の強度を持ってここを通る。
だから、この結合は簡単に切れてしまうし、周りのタンパク質も傷害されて、
複雑な傷害がDNAのうえに起こる。
人間の体は自然にDNAが切れるということは、しょっちゅうある。
ただ、自然に切れるDNAはそこが切れるだけで、周りのものを巻き込んだ複雑な損傷というものは、起きない。
だから、切れても、「間違いなく繋ぐこと」ができる。
放射線による場合は、「それ」が難しい。つなぎ方を間違えることが多いので、アミノ酸が変わってしまって、変異が起こる。
放射線の通る量が少なければ、いろいろな角度で通るので、必ずしも(一つの細胞の中の)2本のDNAがいっぺんに切れる[※]という確率は少ない。
片方のDNAが切れたとすると、A方に鋳型鎖となる塩基があるので、転写してほぼ間違いなく修復できる(一本鎖切断)
しかし、2本いっぺんにDNAが切れる[※]と、(鋳型がなく転写できず、修復で)間違いを起こす(※二本鎖切断)。これが癌の原因になる。
・1ミリシーベルトの放射線を浴びると、どのぐらいこの二本鎖切断ができるか?
以前は、「そんな1ミリシーベルトなんて少ない線量で、二本鎖切断なんて出来ないだろう」と言われていた。
2004年に「1本通ると、だいたい細胞に30個に1個ぐらいは二本鎖切断が起こる」ということがはっきりと証明された。
続き(6)
●では、どれぐらいの線量でどのぐらいの症状が出るか?(『放射線量とリスクの関係、一定線量の場合』)
それは、細胞を通ったDNA切る放射線の量による。
10年前、茨城県JCO事故二人(大内、篠原)亡くなったが、17000〜20000ミリSVから、6000〜7000ミリSV浴びたとされるので
17000〜20000本から、6000〜7000本の線が、細胞の核を通ったことになる。すると、DNAはズッタズタに切れてしまう。
もうそれは、修復できない。大量に放射線を浴びた場合には、治療法は無い。
「だいたい50%ぐらいの人が死亡する」とされるのが、3000〜4000ミリシーベルト(本)。
このときに、(原爆の映画や裸足のゲンをみると分かるが)、線量に応じていろいろ症状が出てくる。
皮下出血、脱毛、下血、嘔吐、下痢、吐き気、発熱など。
骨髄が無くなるので血を止める血小板が無くなったり、細菌と戦う白血球が無くなり感染が起こり発熱するなど、
こういう症状は、線量が多くなるほど、多くの症状が現れ、程度も重くなり、死亡する人も多くなる。
軽い症状は、「リンパ球や白血球が血液から一時的に減少するもの」。一時的なので、時間とともに増えてきて回復する(大丈夫)。
これらは、放射線を浴びて比較的短時間で現れるので、『急性障害』とよぶ。
この「急性障害」を現さない最低線量を、「急性障害のしきい値」という。
●「急性障害のしきい(閾)値」はどれぐらいか?というと、これは人により感受性が違うので一概にはいえないのだが
だいたい100〜250ミリシーベルト(を全身に浴びると、「リンパ球、白血球の一時的減少という急性障害が起こる」)とされている。
それ以下の場合は、起きないと一応されている。
(4200ベクレル...うんぬん???)
続き(7) (埼山博士の講演は完)
●よくTVコメンティターが『すぐには(直ちに)影響が現れる線量ではありません』と言う表現があるが、どう思うか?(00:22:49)
意味としては、「急性障害が起きない」という意味と、わたし(医学博士・埼山さん)は解釈します。
急性障害が起きない線量は、(人によりさまざまであるが)100〜250ミリシーベルトである、
『その線量以下であるから大丈夫です』、というのは
急性障害は起きないかもしれないけれど、数年から十数年経ったときに癌になるかも知れない
という、遅く出てくる効果、これを『晩発障害(発ガンなどのリスク)』というが
『この「晩発障害」を起こす線量』というのは、『これ以下だったら癌などの晩発障害は出ませんという閾(しきいち)値は、
見つかっていない』というのが国際的な合意である。(00:23:55)
たとえば、医療の目的で被爆することを「医療被曝()」というが、
CT一回受けると、10ミリシーベルトぐらい浴びる。マンモグラフィーを一回受けると、0.15ミリシーベルトぐらい浴びる。
そしてCTを受けたからといって、そのとき『すぐ』『直ちに』どういう症状が出る、ということはないが、何年か後に癌になる可能性を抱え込んでいる
ということは確かなのである。(00:24:55)
・『こういう「晩発障害」を無視して「安全だ」と言うのは,できない』と私は思います。
・国際放射線防護委員会の「放射線を防護するための線量リスク、モデル」【『線量当たりの発がんリスク】
この国際放射線・防護委員会でも、『安全量は存在しない』ということが合意されています。(00:25:30)
「このリスクに従って防護してください」ということ。
「1ミリシーベルトを1万人が浴びると、その中の1人が癌になる。
10ミリシーベルトを1万人が浴びると、その中の10人(千人に一人)が癌になる。
そういうことを考えて、防護をしてください。」という意味
で、『1ミリシーベルトは安全です』というのは,「1万人のなかに1人癌が出ても良いですよ」ということ。
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そういうことで、放射線の影響についてのお話を終わります。(00:26:30)、以下、質疑応答をします
続編(1)
00:26:30〜以下、
今井理恵(神奈川県労働医療生活協同組合港町診療所産婦人科医師)による質疑応答(視聴者から質問含む)
・日本では、年齢問わず、一律に等価線量が100ミリシーベルトになると予測されるとき、「ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)」を与える。
しかし、WHO勧告では、子供の場合は10ミリシーベルトと予測されるとき、「ヨウ素剤」を与える。
40歳以上では、甲状腺の発ガンのリスクが低いと考えられているので、原則として投与しない。
ただ、高齢出産が増えており40代の妊婦も珍しくないが、妊婦は40歳以上でも「ヨウ素剤」を投与すべき。
なぜなら、内部被爆した場合は、母体に吸収されて血管に入ると、胎盤を通じて胎児に移行するから。そして、
胎盤を通じて赤ちゃんの甲状腺に取り込まれる放射性ヨウ素を阻止する必要があるから。
だから、たとえ40代でも妊婦は、年齢のみならず『妊娠している』ことをきちんと告げるべき(胎児がダメージ受けぬ)。
・放射線の測定方法は、一定時間における空間を集めてフィルターを通して、そのフィルターに付着した放射性元素の量で測る。
だから、「粒子性」の放射性物質の量だけである。しかし、「ヨウ素」は非常に揮発性なので、測れた「粒子」の量の、実際は6倍ぐらい放射性ヨウ素はある。と私は聞いた。
よって、「放射性ヨウ素」に関しては、測定された数値(=公表値?)は過小評価されている可能性(どんどん増減しているときそれが加味されない可能性も)がある。(0:33:19)
続編(1)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●「市町村と県などで「ヨウ素剤(安定ヨウ素)」の配布・服用の判断が違った場合、どうか?」
「刻一刻と変化する「放射性ヨウ素」から内部被爆によるダメージを防ぐには、24時間以上前に服用することが望ましい「ヨウ素剤」を
いったん配布されたのに、返すのはどうか?」
埼山「ヨウ素剤1錠飲んだからといって、健康を害するということはまったく無いので、
厚生労働省にヨウ素剤・検討委員会があるがそこに数名委員参加していた甲状腺専門医が
『自分たちが患者さんにヨウ素剤を投与するときに副作用のことを考慮したことはない』と発言していた。」
「だから、「ヨウ素剤過敏症」といわれることがあるが、それは「一般に造影剤過敏症」といわれる人たちにみられるもので、
ヨウ素剤に限らず、他にいろんな夾雑物があるから、夾雑物に対するアレルギーではないかと言われている。
ヨウ素剤自体のアレルギーというのは考えにくい。」
チェルノブイリ事故のとき、ベラルーシ(白ロシア、放射性物質の60%を被ったといわれる)にはほとんど「ヨウ素剤」は配布されなかった。
ベラルーシには、子供の甲状腺ガンがもの凄い多発した。
そのとき、ポーランドは一律かつ大量に1千五十万人に「ヨウ素剤」を服用させた。ほとんど副作用は報告されていない。
「ヨウ素剤」ぐらい副作用が無くて安いものはないぐらい、しかも日本は外国に輸出してる国であり、
『製造・配布コストはほとんど問題にならない』(厚労省・検討会)
・「甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症、機能低下症)を持ってる人も、こういう状況では深刻な副作用など与えないので、飲んでください。」
で、万が一何かあった場合には、体内からどんどん排出されるので、「ヨウ素剤」の服用を止めればいいだけ。
続編(3)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●福島原発の近くに住む人たちに対する「ヨウ素剤」の配布はどうあるべきか?(00:39:00)
ふつう外国の場合は、たとえば原発の多いフランスでは、0〜5qの場所には各家庭にすでに配布してある。
いざ何かあったときすぐ飲めるように、家庭配布というのが行われている。
5〜10qのところでは、学校や保健所などに備蓄してある。いざというとき、そこで飲める。という体制になっている。
しかし、日本の場合は、(コストも安く外国に輸出できるほどなのに)あっても(配布はせず)、官署が管理したまま備蓄する。
で、100ミリシーベルト以上(まさに「急性障害」の出る危機的状況)にならないと思った場合には、せっかく持ってても配布しない。
さきほどの話のように、「(一度危険地域へ配ったものを)回収までしている!(欧州など諸外国と逆じゃないか)」「そぉぉぉーー笑」。
だから、「何のためにあるのか?」(専門の人も首を傾げる)。
国によって随分違うが、「今度のように津波で流されたような(突発事故の)場合は、(想定外だったとして)一、二あっても仕方ないが、
そうじゃない場合は、家庭配布というのは、あっていいんじゃないか」と思います。
そして、「いつ飲むかなど、服用の仕方を教えて(教育を徹底して)おけば、いい」と思います。そもそもそれほど危険な薬剤ではない。
・現状に即して言うと、「屋内待避の(指示のある)方々には、もうこの時点で一刻も早く配るべきであると」「もちろんそう」
●・『現時点(2011.3.20)で東京に住んでいるリスクをどう考えるか?(放射性物質は来ているのでは?)』(00:41:48)
「いまの発表だと、0.02-0.03μSv/h?。あまり正常と変わらないので、このままいけばリスクを心配することはないと思う。」
「ただ、福島第一原発の状況による。4基とも危険な状態で、どの一つが大量の放射性物質を放出したとしても危険で、
その放出したときに、どういう風が吹いていてどういう天候かによる。この予測は「SPEEDI(スピーディ)」という
コンピュータシステム」がある。
続編(4)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
「放射性物質が放出された場合、どんな物質が、どういう風向きでどのように拡散され
周辺環境にどのように広がるかを地形や気象を考慮し、すばやく 予測するコンピュータシステム」がある。
(《System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information》略.「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」)
現在でも、このコンピュータシステムで予測シミュレーションしている。
もしも原発の状態が悪化して、多量の放射性物質が漏れる危険が迫ったときは、
そのデータをなるべく早く公表して、
「どういう場所にどういう被害があると予測されるので、この地域の人は避難したほうがいい」という方針を、
早い時点で出す、
ということ以外には、わたしたちは詳しい知識もないし・正確なデータや根拠もない、というのが現状である。
だから、「もし原発の状況が悪化して、放射性物質が大量に漏れる危険が迫ったら、
政府やそのような公的機関はリアルタイムで情報を刻々と出していくべき。」
それ以外に手だてはない。そして「どういう方面に避難を誘導するか」が鍵になる。
●質問「単位ですが、ミリシーベルトはper hourですか?(毎時、/時)?」(00:44:18)
「わたしが言ったのは、per hourじゃなく、トータル(積算)でのシーベルトです」
「いま刻々と発表されているのは、ooμシーベルト/hourですね。」
「だから、そのooμシーベルト/hourの所に、何時間居るか何日間居るか、その時間を掛けて全被爆線量は計算します」。
「私がさきほど言ったのは、この全被爆線量に対する危険性です」
続編(5)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●「大阪や京都に親戚がいるので、すでに避難した人たちがいるが、それをどう思うか?」
「それはいいこと。何もなければそれでいいし、旅して帰ってきたと思えばいい」
●「ただ、会社や学校など日常生活を捨てて東京(首都圏)を捨てて金をかけてまで避難する人もいるがどうか?」
「そのような人はもっと大変な事態を心配して、東京から離れるわけで」「他方、そのような心配を共有しているが、日常生活を捨てることができず、東京を離れられない人が多い」
「そこで、そのような人たちのために、東京(首都圏や北関東含む?)の人たちに「ヨウ素剤」を配布するという考えはどうか」
「それは分からない。何百万人の話になるし。どのくらいのヨウ素剤の備蓄があるのか」(00:47:30)
●「東京にいる若い男女。特に妊娠している女は大丈夫か?」(00:49:30)
「いまの状況(2011.3.20)が続けば、そう心配はない」
●ただ、TVや新聞は「ここから下は心配ない」、というのはすべて「『急性障害』は起きない」という話ばかり。(『直ちに健康に影響はない』)(00:50:45)
人により感受性が違うのでかなり幅はあるが、「ここから下だから、健康状態が急に悪くなるようなレベルではない」(「直ちに健康に影響はない」)ということ。
しかし、さきほどの説明とおり(国際放射線防護委員会)の「放射線量当たりの発がんリスク」の右肩上がりの発生率と、
「晩発障害について『安全量はない』」、つまり『これ以下の線量なら晩発の発ガンなど障害は起こらないとの閾値(しきい)は存在しない』
という国際的合意がある点について、(00:51:07)
『晩発障害』、つまり「発ガンなど何年、何十年かけて私たちの体に悪影響をもたらすことについては、閾値は存在しない。」
「浴びた線量でどっから急に上がって/どこまではゼロで発生せず安全、という閾値(しきいち)というものは無い。」それは浴びた線量によってリスクは上がっていく。
比例された確率が上下するだけで、(たとえ少ない量でもを真っ先に自分や家族が発ガンしまうことはありうる。)
続編(6)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●これに対し、一部のTVコメンティターのなかには「いや晩発障害にも閾値はある」「今ぐらいの線量なら、全然に平気なんですよ」などと述べている。
そこはどう思うか?
「そうTVで言うなら、その証拠をきちんと見せるべきである」
「こういうデータ(国際放射線防護委員会など)は、いろんな、たとえば広島長崎など被爆者8万7千人など六十年間かけてずっと追跡調査して、
これは世界でも一番信頼のあるデータだといわれていて、そのデータに基づいた外挿して作られたモデルです。」
「だから、放射線の専門家たちが長い時間を掛けて、疫学的調査と実験をして、出てきた結果に基づいてこのモデルはできている」
「もしそれが違うと言うのであれば、その証拠(医学的・科学的データに基づく)をきちんと出すべきである。
そのうえで、そのことを責任もって発言すべきである」
「発ガンについては、DNAが損傷されると、二本鎖が同時に切れて(相方に鋳型鎖がなく転写不能)間違いを起こしやすい傷害が起きると、発生するが
『二本鎖切断は1ミリシーベルトでも起きるということ』は、はっきりと実験的に証明されたのです。」
「そして、『二本鎖切断が癌の原因になること』は、誰も異論もなく反論もできないのです。」
「1ミリシーベルトずつ放射線を(特定の)1万人に同時に浴びせてそのうち何人発ガンするか調べることは、これは疫学調査としてはできない」
「だから、200ミリSVや100ミリSVになればこれだけ癌が増えること(母数は特定できるしそのうち発生率も分かる)ははっきりしているので、ここから外挿推定して線を引いている。
「細胞核に1本、2本、3本と放射線が通っても、放射線ひとつひとつのエネルギーは変わらない(放射線一本ごとのエネルギーは同じ)から、傷の質は変わらないわけで
数だけが変わる。だから、数が多くなければ、傷や間違いもそれに比例して多くなる。」「だから、こういう直線を斜めに外挿して引くことは
理論的にも間違えていない。」(00:54:45)
続編(7)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
・質問「外挿して」とはどういう意味か?(00:55:40)
「外挿(推定)とは、たとえば右上のグラフの上の高い線量(数千ミリSv−100ミリSv)では、何名中何人発ガンという実数の点データがある。
その実数のある点データを結ぶと、右肩上がりの直線グラフが引ける。で、たとえば胎児の場合は、10ミリSvの発ガンデータの実数データがあるとしても
1ミリシーベルト当たりの発ガン実数のデータが(全体として一体何人の母数があるのかが分からないため)得られない。
この場合、高い線量を浴びた(特定できる母数から発ガン率を割り出し)ところから、(母数と発生率の分かる)あるところまで、疫学的データがあってグラフが引ける場合、
10ミリシーベルト以下は、発ガン率のデータがない(どれだけの母数があるかが不明なうえ、発生数も特定しにくいため)。
その場合、高い数値から、引けるところ(たとえば10ミリシーベルト)まで引きますが、あとは
aストンと零に落とす、これが「閾値をこれ」とする考え方。
bそこだけ低い凹にして繋いだり。
cデータが無い(取れない)ところは、(零にしたり(閾値の考え)、凹カーブにしたりせず)、
「こう考えるのが合理的と推定される線を引く」のが、「外挿」(推定)です。
そして、今は『ここが「外挿(推定)」として「直線である」』というのが、国際的合意と言われている。
(その根拠は、「 1ミリシーベルトの線量でも、DNAに二本鎖切断が起こること」、「二本鎖切断が発ガン原因となることに異論はないこと」。
「広島・長崎の8万7千人の六十年間の追跡調査による結果の疫学的データに基づく医療・科学分析」など。)
すなわち、『低線量でも、比例的に確率は低いが、発ガンのリスクは起こる』というのが国際的合意なのである。
続編(8)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●「ヨウ素剤」はどこで買えるのですか?(00:58:25)
「いまは国内では買えません。」「日本ではヨウ素剤は医師の処方箋がないと買えないことになっている。」
「横須賀は原子力空母があり放射能漏れがあると大変というので、横須賀市と米軍の合意で薬局で買えるようしてた時期があったが、今は買えるか?不明」
「他の原発の傍の住民で、小規模で購入してるグループがあった」
「特別にそういうグループが無い限り、日本では一般国民が薬局でヨウ素剤を買うことできない。これは不思議なことです」
(今井)「医師の処方箋についても、ヨウ素剤については、一般の人(甲状腺疾患のある患者以外)に処方箋を書くことはまず無い。
『ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)』はふつうの病気に使う薬ではないので。甲状腺疾患にも使わないし、保険点数も付かないので。」
だから、国および地方公共団体が「放射性物質が出たときに」「その責任において配る」ものに尽きる。(1:00:25)
もちろん、最近はインターネットなどで個人輸入する方がいろいろ居るので、(外国はヨウ素剤は比較的自由に売っているので)あるいは買えるかも知れないが。
「この番組見て、日本で医師に『ヨウ素剤を処方しろ』と頼んでも、それは難しいと思われる。」
「処方箋切っても、日本では、一般の調剤薬局には置いてない」ということも含めて。
●「ほうれん草、水道水、牛乳からも放射性物質が検出されたのは、どうでしょうか」(1:02:25)
「水道水で、放射性ヨウ素(I131)が、東京都は1.5Bq/s。栃木県は77Bq/s。」(2011.3.20時点)
「水道水に入るということは、千葉だったら霞ヶ浦は雨が降ってきたらすぐ汚れる。大気中のものが雨に含まれて入ったのでは。」
・「健康上のリスクとして、たとえば、この栃木県の77Bq/s、という値はどうか?」(1:02:30)
「まだ規制値よりは低いですよね。(通常よりは高いけれど)」
「ほうれん草は2000Bq/sですね。日立は6000Bq/s、1万6千Bq/sってありますね。これは食べられないですね。」
「その規制値に達しない場合でも、(当分の間)野菜はよく洗って食べたほうがいい。」
続編(9)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
●『そのほうれん草を1年間毎日食べ続けても、CTスキャン1回分かその五分の一なので問題ない』と国(テレビなど)が言っているがどうか?(1:03:46)
「それはおかしい。」「レントゲンと比べても、CTスキャンは医療被曝でも高い方であるし」
「医療被曝と比較することが、そもそも間違ってます。」
「まず、医療被曝つまり検査による被爆が、日本は世界で一番高い。それが7年前に分かっているのに、
厚生労働省は何の手も打って来なかった。無駄な検査を受ける可能性があるわけです。」
「それにしても、医療被曝の場合は、正しく行われれば、CT検査をして病気が見つかったり治療方針が決まったりすれば、
医療被曝によるリスクと、病気を見つけたことによる利益と秤にかけて、利益のほうが大きいとされて(正当化)初めて、
患者はCTスキャンをオーダーする。そういう患者さんとっては、(リスクを上回る)利益がある。」
「さらに、そういう利益があっても、患者さんは『CTスキャンは止める』という選択もできる。」
ところが、原発の事故によっては、「好むと好まざるに関わらず、年齢も(病気の発見も治療も何も)関係なく、みないやおうなく被爆させられている。」
それを「医療被曝と比較する」というのは、だいたい「比較する神経を疑って」しまう。
そんなことを言うのは「全然、比較する意味が分からない」。
●「医療被曝は必要なことは認めつつ、なるべくそれを減らそう」という医療機関は日本でも出始めている。(1:06:47)
「日本の厚生労働省はそれをやってるか不明だが、世界的にはそうです。アメリカでもCT検査したら自動的に線量を知らせて、
ある一定の線量になったら警告を発して『どうするんだ?』という。それに患者に選択の余地を与える」
「しかし、この原発のように環境が放射性物質で汚染されると、私たちは逃げるしか手はない。しかも四六時中、放射線にさらされる。」
「医療被曝のときは、その検査のときだけ。もちろん避けることもできる」そういう状況と、
こういう環境の放射能汚染により原発事故により、不当に四六時中、被爆させられていることは、決して比較にならない。※
114 :
名無しさん@十一周年:2011/03/23(水) 15:11:30.72 ID:+hxCLW6Z0
続編(10)
以下、今井(産婦人科医師)による崎山博士と質疑応答(視聴者から質問含む)
※(たとえば、生きるため臓器を摘出したり移植しなければならないのが医療であるが、
それを健康な人たちに(同じで大丈夫だからと)強制することを、比較することに等しい。)
●質問「福島県が放射線健康リスク管理アドバイザーとして招聘した長崎大学山下としかず教授の話」(1:08:00)
『ミリシーベルトという単位の大気中の放射線量が体内に取り込まれるのは、その数値の十分の一にすぎない。
毎日20μシーベルト/hの観測が続いたが、放射能[放射性物質]は気象条件や気流に影響して飛ぶ。
このケースで一時間外に居ると、20/10=2μシーベルトが体に入る。仮に一ヶ月間外に居ても、1ミリシーベルトしか蓄積されない。』
というコメントに対して、どうお考えでしょうか?
「だから何なんですか?」
─『仮に一ヶ月間外に居ても、1ミリシーベルトしか蓄積されない』─
『これ』は「放射能(放射性物質)」の話してますね。だから、たとえば「これがプルトニウムだったら、どうするんですかね?」
「1ミリシーベルトかもしれないけれど、(全部じゃなくても)プルトニウムだったら、それを一生(超至近距離から)浴び続けることになる。内部被爆ですからね。」
「だから、こういうことを言うことによって、何をおっしゃりたいのか?」
●横須賀の「ヨウ素剤」の情報:たしかに、横須賀では公的な配布に至らず薬局でも備蓄があるそうですが、今は被災地に送っている。
だから、横須賀の人が行っても買えない。「必要性のあるところへ優先された」
●質問「癌患者が被爆した場合、あるいは癌治療を受けたことがある人が被爆した場合、再発するリスクはどうか?」(1:10:50)
「その方の状態による。癌の状態や、癌の種類はぜんぜんまちまち。」「なので、その情報がないまま、コメンはできない、これは分からない」
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「わかりやすい説明と討論、ありがとうございます。また質問など寄せられたら、答えたいと思います。」(1:12:25)
(完)