スギ花粉症の本格シーズンが到来した。
春は間近というのにマスク姿の人が目立つ。目をショボショボさせている人も多い。
政府の推計では、子どもから大人まで国民の5〜6人に1人がスギ花粉症で苦しんでいる。
発症者の多さから国民病とも言える。
特に今年は、花粉の飛散量が多い。昨夏の猛暑でスギの雄花がよく育ち、大量の花粉を飛ばす。
環境省などが、スギ花粉の飛散状況を毎日公表している。こうした情報も参考にして、外出時間を調整するなど、
花粉を避ける生活の知恵を身につけよう。症状を悪化させないため、専門医に早めに相談することも心がけたい。
社会的損失も侮れない。
重症化すれば仕事や学業に差し障る。外出を控える人が増え、観光や小売り、外食産業にも影響する。
6年前にスギ花粉が大量飛散した際、第一生命経済研究所は、経済的な損失を5000億円〜7000億円と算出した。
マスクや空気清浄機といった対策商品の売り上げによる特需も400億円〜600億円と試算したが、
損失額には、はるかに及ばない。
関連医療費も、政府の推計では2800億円を超えている。
スギ花粉の飛散を減らす、という根本対策の強化が重要だ。
スギは戦後、住宅用木材として大量に植林された。これが大きく成長して、花粉を大量に作り出す状態になった。
今や、日本の森林の2割近くを占めている。
>>2以降に続く
(2011年3月7日01時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110306-OYT1T00683.htm >>1の続き
政府は、花粉が少ないスギを育成し、既存のスギが伐採された後に植林する施策を進めている。
ただ、植え替え用の少花粉スギは、全国で年間に植林されるスギの6%にとどまる。
この事業の政府予算も年間2億円足らずだ。
参院予算委員会では、自民党議員が、政府の花粉症対策は現状では不十分として、予算の大幅な増額を要求した。
林野庁は10年間で少花粉スギの苗木を今の約10倍まで増産することを目指している。まずは、これを加速すべきだ。
同時に、少花粉スギへの植え替えを促進するため、林業の振興にも本腰を入れねばならない。
現状は、安価な輸入木材に押されて国内の林業は衰え、各地の森で既存のスギが放置されている。
スギ花粉症被害が深刻な東京都のように、スギの植え替えを含めて、直轄で森林資源の管理に乗り出した自治体もある。
こうした取り組みを全国に展開することも政府は検討すべきだろう。
了