<こうのとり追って>第2部・不妊治療を知る/2 「男性に原因」が3分の1
◇偏見や情報不足、早期受診の壁に
新婚当初から2人は、ある話題になるといつも険悪なムードになった。「第三者から精子を
もらう方法もあるそうよ」「なぜそこまでして子どもが欲しいんだ」。東北地方の会社員の夫
(36)は第2次性徴が起こる年ごろの変化が少なく、大人になっても射精したことがなかった。
「子どもは無理」という告白を受け入れて結婚した妻(38)だが、「女として生まれたからには
一度は子どもを産みたい」との思いは断ち切れなかった。
結婚から2年半が過ぎた08年の夏、夫が折れて非配偶者間人工授精(AID)の治療を受ける
ことにした。治療に必要な「無精子症」の証明書を出してもらうため、国際医療福祉大病院
(栃木県那須塩原市)を受診すると、男性不妊が専門の岩本晃明教授(泌尿器科)から
意外な言葉をかけられた。「薬で治る可能性があります」
夫は、精子を作るために必要なホルモンの分泌に異常がある「低ゴナドトロピン性性腺機能
低下症」と診断された。2000〜1万人に1人の割合というごくまれな症例だ。性腺ホルモンを
補充するため週3回、自宅で自己注射する治療を約1年間続けたところ、昨年3月までに精液が
出るようになり精子も現れた。精子は数も運動率も十分で、岩本教授は「自然妊娠も不可能
ではない」と説明した。夫婦は「治療の余地があるとは想像すらしなかった。男性不妊の情報は
あまりにも少ない」と振り返る。
不妊の原因は不明のケースも多いが、少なくとも3分の1は、精子が少ないなど男性側に原因が
あるといわれている。しかし、男性不妊専門の「恵比寿つじクリニック」(東京都渋谷区)の辻祐治
院長(泌尿器科)は「昔から不妊の原因は女性にあるという誤解があり、それは今も続いている」と
指摘する。辻院長のクリニックでも「婦人科系の不妊治療クリニックで妻が妊娠できなかった男性が、
受診してくるのが現実」といい、男性不妊を最初から疑って来院するケースは多くない。
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>>2以降に続く)
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20110201ddm013100031000c.html