米国の反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が今冬の調査捕鯨妨害のために投入した新抗議船「ゴジラ号」に対し、オーストラリアが昨年末、
暫定で船籍を与えていたことがわかった。SS船で豪船籍は初めて。日本側は海の安全を損ねるSS船の旗国にならないよう要請してきたが、
豪政府が無視した形だ。
ゴジラ号は22日、豪南部のホバート港に帰港している。すでに今期、南極海で捕鯨船攻撃を行っており、
日本側の抗議で今後、豪捜査当局が強制捜査に入る可能性も指摘されている。
これまでSS船の船籍を認めてきた国は英国、オランダ、トーゴなど。日本はSSが妨害を行うたびに、
航海の安全を定めたさまざまな国際規約に違反するとして、世界各国に船籍を認めないよう要請してきた。
英国、トーゴはこれを受け船籍を剥奪。SSはその後、無国籍船のまま攻撃を続けたこともある。しかし、
反捕鯨国でもあるオランダは「(SSの行為は)テロにはあたらない」などとして、SSの他2隻の船籍を認め続けている。
ゴジラ号は昨秋、SSが南アフリカから購入し、豪政府に船籍申請を出した。日本は却下するよう求めたが、
豪側は「犯罪歴がない」などとして申請を承認。現在、必要書類が完全にそろえば暫定措置が外れる状態という。
その後、SSは「オーストラリアから大きな支援を受けた」などとPRした。
ただ、豪州国内ではこの認定が「豪連邦警察への捜査の足がかりを与えた」(国際法専門家)とする見方も出てきている。
これまでのように、公海上の不法行為でも捜査管轄権があいまいで手が出しにくかった状態ではなく、
自国船籍の船に対しては、国内法に基づき、厳格な司法措置を取る必要が出てきたからだ。
ゴジラ号は今月5日、南極海で第2勇新丸に対して高圧ランチャーで瓶を投擲(とうてき)。かつて同様の暴力行為で、
豪警察がSSへの強制捜査に踏み切ったこともある。SSへ強硬措置を講じれば、反捕鯨政策を取る豪政権の支持率が落ちる恐れもあり、
豪州では「良好な豪日関係のはざまで、政府は難しいかじ取りを迫られている」との声も出ている。(佐々木正明)
産経新聞 1月24日(月)7時57分配信
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