・初夏の朝、気がつくと、ぼろぼろ涙を流しながら居間でわが子を抱っこしていた。
東京都に住む派遣社員、黒木裕子さん(36)=仮名=は4年前、生後2カ月の長男(4)の
夜泣きに悩まされた末、「産後鬱(うつ)」と呼ばれる鬱病を発症した。
「寝ようとすると1、2時間おきに泣き声で起こされた。初めての子育てで、なぜ泣いているのかも
分からない。泣かれているストレスと不眠とが極まってある日、子供に『やめてー!
もうやめてー!』と叫んでいた。子供はびっくりして泣きやんだ」
普通じゃないと思った。
会社員の夫(38)は見かねて精神科へ連れていった。医師は夫だけに「鬱ですね」と告げた。
メーカーで営業職の夫の帰宅は午前様が当たり前。
「睡眠導入剤を処方されても眠れず、家に閉じこもり子供と2人きりの生活で追い詰められた。
一日中泣き声を聞いて、テレビをつけたり、音楽をかける気にもなれず、おっぱいを飲ませながら
自分は冷凍食品を食べた。『何でこんなことになっちゃったんだろう』と考えるだけだった」
妊娠期から出産後に問題を抱えた母親に虐待リスクの高さが指摘されている。
福岡県に住む主婦(33)は、2歳の長男を自宅マンションに閉じ込めて家を飛び出したことがある。
長女が生まれて家事と育児のストレスが一気に増え、産後鬱になった。夫に「子供を置いてきたから
何とかして」とメールした。
「産後鬱になると、暴力的な衝動と、それに対する後悔が繰り返しやってくる。やってはいけないと
分かっている。でも衝動的にやってしまう。自分は母親失格だ、もう死にたい…。誰か助けて!」
「子供の夜泣きで眠れない」「夫は育児をしない」…。堺市中区で今年3月、24歳の母親が
生後2カ月の長女を抱え上げ、全身を激しく揺さぶるなどして死亡させたとして逮捕された。
傷害致死罪で起訴された母親は保健所でこう訴え、「産後鬱かもしれない」と相談していた。
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>>2-10につづく)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101122/crm1011222137015-n1.htm