【朝日新聞・天声人語】尖閣ビデオ流出問題…流した者は国民の知る権利に応えた「義賊」なのか、それとも国家への「謀反人」なのか

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1空挺ラッコさん部隊ρφ ★
とかく人は、耳にしたことをすぐ口にしたがる。性悪説で知られる中国の荀子は「口と耳の間はわずかに四寸」と
戒めている。かくて「ご内密に」「ここだけの話……」といった紳士淑女の「協定」は、まず守られぬのが相場となる
▼国家組織の耳目と口も、油断ならず近いらしい。警察の公安情報とみられる文書に続いて、尖閣諸島沖の中国漁船
衝突事件のビデオがインターネットに流れ出た。それぞれに背景も意味合いも違うけれど、政府、当局の失態と
いう点では変わるところがない
▼尖閣のビデオは公開か否かで揺れていた。流した者は不明だが、海保や検察に疑いが向いている。国民の知る
権利に応えた「義賊」なのか、それとも国家への「謀反人」なのか。ネットに集まるコメントは「よくやった」
が大半という
▼いずれにしても政府には痛い。穴のあいた樽(たる)よろしく重要情報が漏れる国は、世界から信用されまい。
さらにビデオは、中国に対する数少ない持ち駒でもあった。だが使うことも手の内に残すこともできず、
もはや木ぎれである
▼流出という「現実」が、政府の逡巡(しゅんじゅん)の先を行ってしまった。ロシア大統領の北方領土入りにせよ、
この政権はどうも、もたつく間にやすやすと現実に先んじられる。下手な外野手の頭上を飛球が越えていく印象だ
▼政治の厳しさを「予期せぬことが起きると、いつも予期していなければならない」と言ったのはサッチャー
英元首相だった。民主政権は同好会的なぬるさを克服できようか。下手も絵になるのは、草野球だけである。

ソース:朝日新聞
http://www.asahi.com/paper/column20101106.html