政府は、ベルギーでのアジア欧州会議(ASEM)の際に菅直人首相と温家宝中国首相の会談が
実現したことを対中関係修復への一歩と受け止めている。ただ、関係悪化の原因となった尖閣諸島の
領有権をめぐる問題で、双方の主張は真っ向から対立したまま。「フジタ」現地法人の社員1人の
拘束も解かれておらず、中国側の出方を見極めながら慎重に修復を探る考えだ。
日中首脳会談が行われたことについて、仙谷由人官房長官は5日の記者会見で「アジア諸国、
日中両国、世界各国のとりわけ経済にとっても良かった」と評価した。前原誠司外相も会見で
「目に見える形でやったのは良かった。再発防止を含めた(話し合いの)門戸は、私どもの方は
開けている」と述べた。
政府内では当初、日中首脳会談の実現を困難視する見方が強かった。しかし、水面下では
接触の機会を探っていたとみられ、政府高官は5日、「ハプニング的なことが起こるわけがない。
あうんの呼吸だ」と語った。11月中旬には、首相自らが議長を務める
アジア太平洋経済協力会議(APEC)が横浜市で開かれる。また、今回のベルギー訪問は、
今国会の代表質問の日程を変更して急きょ決めたものだ。こうしたことから、首相は
日中関係正常化に向けた何らかの成果を持ち帰る必要があった。
ただ、首脳会談が実現したとはいえ、政府は中国側の今後の動向については読み切れないでいる。
フジタ社員の拘束が続いている上、レアアース(希土類)の対日輸出もなお正常化には
至っていないためだ。中国側が、温首相と菅首相の接触を正式な会談とは異なる「交談」と
位置付けたことも、対日外交をめぐる中国政府内の複雑な事情をうかがわせる。
外相は会見で「あまり焦らずに、しっかり話をする中で、お互いの合意点を一つずつ
確認していくのが大事だ」と強調した。
*+*+ jiji.com 2010/10/05[22:06:13] +*+*
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010100500890