・尖閣諸島付近における海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で、“対抗措置”を
エスカレートさせる中国に対し、日本政府の動きが鈍い。中国側が事件を「あえて領土問題と
位置づけようとしている」(政府高官)のは明らかなだけに、日本側は「冷静な対応」を堅持する
構えだというが、危機感は薄い。菅首相は20日、「合宿」と称する新閣僚の勉強会を
首相公邸で開いたが、中国への対応策に関し指示はなかった。
首相は20日午後、外遊中の海江田経済財政担当相と松本環境相を除く15閣僚と
党幹部を集めたため、対応策を協議したとの見方が強まったが、経済政策や政治主導の
あり方などについて意見交換し、21日に閣議決定する副大臣・政務官人事の最終調整を
行っただけ。福山官房副長官は勉強会後、「事件に特化した話はしていない」と語った。
しかも首相とほとんどの閣僚は勉強会後、都内のホテルに場所を移し、中国料理に舌鼓を打った。
中国の波状的な攻勢に対し、日本側は前原外相が「尖閣諸島に領土問題は存在しない。
国内法で毅然と対応するだけだ」と繰り返し強調している。ただ、民主党代表時代に中国の
軍拡を「脅威」と批判していた前原氏でさえ、就任後は「脅威」という言葉を意識的に避け、
「懸念」という表現にとどめる配慮を示す。
まして首相からは明確なメッセージは聞かれない。片山総務相は19日のNHK番組で
「もっと領土に対する意識を国民に涵養するような施策が必要だ」と主張したが、こうした
意見が唯一の民間閣僚からしか出てこないあたりに民主党政権の主権に対する意識の
低さがうかがえる。
一方、中国は南シナ海をチベットや台湾と同列に扱う「核心的利益」と呼び、海洋権益の
拡大を着々と進める。領土・主権への執着は日本と比較にならないほど強い。
中国の胡錦濤国家主席は11月に横浜市で開かれるAPEC首脳会議に出席する予定だ。
このため、政府内には「時間が解決する」(政府高官)との楽観論がある一方、「何も
メッセージを発しないと、衝突事件を領土問題と位置づける中国の主張が既成事実化する」
(政務三役)との懸念も出ている。(一部略)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100921/plc1009210029001-n1.htm