★【櫻井よしこ 菅首相に申す】「南シナ海」が教える事
9月7日午前、中国の漁船が尖閣諸島のわが国領海を侵犯した。海上保安庁の巡視船
の警告を振り切って逃走を図るなど、その行動は悪質で、海保はこれを拘束した。だ
が、日本政府が同船船長を公務執行妨害容疑で逮捕する方針を固めるまでに半日ほども
かかった。菅直人首相や仙谷由人官房長官らの遅疑が原因だ。
中国の反応は予想どおりだ。「釣魚(尖閣諸)島および周辺海域はもともと中国の領
土だ」「日本の巡視船は、いわゆる権益保護活動を行ってはならない。中国の漁民の安
全を損なう行為を行ってもならない」というのである。
優れた指導者は、過去を現在に照らし合わせることで、未来を洞察する。このままで
は、南シナ海の現状が、近未来の東シナ海の姿になると、首相は知るべきだろう。
いま南シナ海では、同海域の資源と権益を独占しようとする中国と、長年、南シナ海
の西沙、南沙諸島を領有してきたASEAN諸国の必死の闘いが進行中だ。ASEAN
はベトナムを含めて南シナ海の航行、アクセスの自由を守り続けるために、国益をかけ
て米国との関係強化に乗り出した。
ゲーツ国防長官は去る6月、シンガポールでの国際戦略研究所(IISS)主催のア
ジア安全保障会議で、「いかなる脅威にも対処可能な最大限の軍事力の配備が米国のア
ジアへのコミット」と述べた。クリントン国務長官も7月、ベトナムのハノイでASE
AN地域フォーラムに出席し、スピーチの約3分の1を割いて南シナ海の航行の自由の
重要性とアジアへの米国の関心の強さを語った。
いずれも中国への牽制(けんせい)発言である。楊潔●中国外相は南シナ海問題を政
治問題化してはならないとして、「米国の介入」に反発したが、南シナ海問題を外交交
渉で解決し、武力を用いないという2002年の合意を破ったのは中国だ。
(続く)
■ソース(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100909/plc1009090429004-n1.htm