・同和地区の住民を対象にした自治体の住宅新築資金等貸付事業で、未返済額が県内全体で
約20億円にのぼることがわかった。
この事業は1960年代後半〜90年代後半、全国的に実施された。同和地区住民に、低金利で
住宅の新築や改修費を貸し付けた。償還期間は最長で25年。
県内では現在の19市町が事業を行い、4386件で計177億7773万円を貸し付けた。
うち19億9760万円が未返済だ(08年度末現在)。ただし、返済中で、滞納ではない額も含んでいる。
板野町の未返済額は3億5316万円。市民オンブズマン「とくしま見守り隊」板野支部の西川恵二
代表は25日、町が強制執行の手続きをせず「違法に財産管理を怠っている」として監査請求をする。
西川代表は「町税が使われているのに、あまりにも怠慢だ」と指摘している。
同町の担当者は「貸し付け対象は経済基盤の弱い人たちなので、担保や現金収入がなくても
借りられる制度だった」「保証人に支払わせるという発想がなかった」などと説明している。
一方で、各自治体は滞納に頭を悩ませている。督促状の送付や戸別訪問を繰り返しても、
なかなか応じてもらえないという。転居を繰り返して行方不明の人や、債務者が死亡したケースもある。
小松島市では、保証人に本人への完納指導を依頼するのが最高レベルの対応だ。担当者は
「民間の金融機関とは違うので、強引な取り立てはしにくい」。牟岐町は「法的措置をとると
裁判費用が高くつくし、建物を競売にかけても売れるとは限らない」との見方だ。
阿波市は強制執行に乗り出したが、戸別訪問の際、日雇い労働で中学生の子どもを育てる
50代男性に泣かれたケースがあったという。「こっちも精いっぱい汗をかいてからでないと、
厳しい対応はできない」と担当者。
同和対策に詳しい南川諦弘・大阪学院大法科大学院教授(行政法)の話
事業が始まった当時、貸付金が戻ってこなくてもやむを得ないという、同和問題をめぐる
社会的背景があったのかもしれない。でも今は、時代が変わった。行政が昔のままの特別
扱いを続ければ、市民は納得しないだろう。住民訴訟を起こされても仕方ない。 (一部略)
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