日韓併合100年にあわせた首相談話は、仙谷由人官房長官が民主党内の反発を押さえ込み、
執念で閣議決定にこぎつけた。過去の植民地支配への「反省とおわび」を改めて表明することは、
昭和40年の日韓基本条約に伴い、「完全かつ最終的」に解決済みとなった個人補償請求問題を
再燃させかねない。仙谷氏の“暴走”は政権を揺るがすだけで済むのだろうか。
「北朝鮮の拉致や核の問題を解決するには日韓関係を未来志向で強化しなければならない。これは戦略的判断なんだ」
仙谷氏は新たな首相談話を機に補償問題が再燃することを危惧(きぐ)する議員をこう説得して回った。
「平成7年の村山談話の踏襲にすぎない」とも強調した。
だが、仙谷氏は4日の記者会見では「日韓基本条約は1つのけじめだが、市民レベル、庶民レベル、
民族レベルで色々なものが残る。未来志向の障害となるものを取り除く努力をすべきだ」と明言した。
「市民レベル」の補償問題はなお残るとの考えはなお崩していないのだ。
仙谷氏と政治行動をともにしてきた枝野幸男幹事長は9日の記者会見で「いつまで謝罪を続けるのか」と問われ、
唐突に元寇襲来を持ち出し、強弁した。
「モンゴルの方と会った時に『先祖が元寇と呼ばれる形で日本に迷惑をかけた』という話が出た。
それをもって、いつまでも謝罪を引っ張っているという話にはならない!」
だが、これまで返還に応じなかった朝鮮王室儀軌を引き渡すことは、日韓基本条約の土台を揺るがし、
決着済みの賠償請求問題を再燃させかねない。
それだけに、党内の保守系議員は談話の閣議決定に強く反発する。
6日に首相官邸で行われた仙谷氏との昼食会では、松原仁、笠浩史両衆院議員が慎重な対応を求めた。
9日夕の政府・民主党首脳会議でも玄葉光一郎公務員制度改革担当相(党政調会長)が
「補償につながらないようにしてほしい」と念を押した。
首相談話は、多様なイデオロギーが雑居する民主党の脆(もろ)さを露呈するとともに、
菅直人首相がもはや仙谷氏の「傀儡(かいらい)」となりつつあることを示した。
9月の代表選で「菅降ろし」の導火線になる可能性もある。
>>2以降に続く
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100810/plc1008100025000-n1.htm