・口蹄疫ワクチンの接種は26日も実施され、政府の現地対策本部の小川首相補佐官は同日
「対象農家のうち接種が完了した農家は95%を超えた」と話した。
しかし、接種に応じない農家もある。民間で種牛を育てている男性は「県の種牛と同様、
特例を認めてほしい」と主張しており、政府が目指す100%接種の見通しは立っていない。
「これは私一人のエゴじゃない。県の種牛も民間の種牛も、同じ県民の『財産』でしょう」。
こう語るのは接種を拒み、種牛を飼育する県内唯一の民間業者、三共種畜牧場の
薦田(こもだ)長久さん(72)だ。
薦田さんは国の種畜検査に合格した「勝気高」「勝安平」など6頭を牧場で育てている。県知事の
認可を得て三重、沖縄などの4県に、年間でストロー状容器約2000本分の精液を販売し、地元でも
約30農家に提供してきた。
だが薦田さんの種牛6頭はワクチン接種の対象になった。約400頭の接種には同意したが、
種牛の接種だけは断固拒否している。
その根拠として、県の種牛の特例措置を挙げる。東国原知事は、法律上、殺処分されるはずの
県家畜改良事業団の種牛を、「宮崎の財産」として特別に処分せず、経過観察しているからだ。
薦田さんは、自分の種牛も「同じ宮崎の財産」と主張し、県に特例措置を要請した。
しかし、県畜産課は要請を断った。薦田さんの種牛を「いわばプライベートな牛」と切り捨てた。
これに対し、薦田さんは「赤字が続いても、自分の夢のために種牛を育ててきた。宮崎のブランド
種牛として評価を得ているのだから、県の財産として認められるべきだ」と激怒。周辺の農家からも
「必ず守ってくれよ」と、励ましの電話がひっきりなしにかかってくるといい、周辺農家とともに
抵抗する構えだ。
畜産を始めて50年以上になる。次世代に引き継いでいくはずだった積み重ねが、明日にも
崩れ去るかもしれない心細さを感じているという。薦田さんは怒りを抑え、最後につぶやいた。
「必要なら、(精液や牛を)県に使ってもらってもいい。事業団に提供してもいいんだ。それで
少しでも地元の畜産業が守られるなら」(抜粋)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100527-00000246-yom-soci