宮崎県の東国原英夫知事が赤松広隆農相に“超法規的措置”を直談判してまで避難させた種牛6頭は、
宮崎牛ばかりでなく、松阪牛や佐賀牛など高級肉牛を生み出す“スーパーエリート牛”だ。
宮崎県には全国各地の畜産関係者から感染回避のため避難を求める要望が相次いでいたという。
「もし感染して処分でもされれば、先人が40年近く続けてきた努力が水泡に帰すところだった」。
関係者からは、ひとまず安心する声が上がった。
6頭を飼育している県家畜改良事業団(高鍋町)は1973年の設立。ここで毎年、
県内の10万頭超の雌牛から350頭を選抜し、30頭程度の基幹種雄牛の精液を
交配して生ませた雄の中から、厳選に厳選を重ねて種牛を育成している。
現在、55頭を管理しているが、流通用に精液を採取するのは市場で評価を得た25頭程度。
今回の避難対象となったのは、特に人気が高く、流通させる精液の90%以上を生産する
6頭(福之国(ふくのくに)、勝平正(かつひらまさ)、忠富士(ただふじ)、
秀菊安(ひできくやす)、美穂国(みほのくに)、安重守(やすしげもり))だ。
県によると、事業団からは、県内の繁殖牛農家に限定して年間約15万本(1本0・5CC)の
人工授精用精液を供給しているという。これを基に繁殖牛農家が子牛を育て、
年間約7万7千頭程度を宮崎牛ばかりでなく、松阪牛、佐賀牛などとして育てる子牛として
出荷するという。
宮崎市内で肉牛を飼育している県農業法人経営者協会の尾崎宗春副会長は「事業団は
感染区域と近接していただけに、一刻も早い移動を願っていた。先人の努力は
ひとまず守られた」と胸をなで下ろしていた。
三重県の松阪牛の肥育農家などでつくる松阪牛協議会の永田憲明理事は「松阪で肥育する
子牛の約半数を占める宮崎産の子牛がいなくなれば、松阪牛の品質にも影響する。
他の子牛産地を探そうにも、宮崎のような信頼度がある産地はなかなかない」と話している。
*+*+ 西日本新聞 2010/05/14[06:59:12] +*+*
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/171511