仙谷由人国家戦略相や原口一博総務相が公務員制度改革で苦慮している。マニフェスト(政権公約)
に掲げた「天下りのあっせん禁止」を先行して決めた結果、50歳代の官僚数が大幅に増え、
その分新卒採用を減らす必要が出てきたためだ。人件費総額の上昇も避けられず、
「公務員人件費の2割削減」という公約にも黄信号がともっている。
官僚機構は、課長、部長、局長と昇格するに従ってポスト数が減る。出世コースから外れた官僚は、
所管の関連団体や企業に「天下り」してきた。再就職先を用意した上で早期退職を勧奨する「肩たたき」
という慣行だ。勧奨退職者は年間2500人いる。
鳩山政権は、公務員制度改革の第1弾で「官民人材交流センター」の廃止を決め、天下りの「あっせん」
を禁止した。再就職先がないのに「肩たたき」を続けるのは難しいため、マニフェストに盛り込んだ
「定年まで働ける環境」も整えていく方針だ。
だが、あっせん禁止が先行した結果、勧奨退職者の扱いが宙に浮いてしまった。総務省の試算では、
肩たたきをしないで公務員の定員数を守るには、2011年度の新卒採用者数を、09年度比で
約44%少ない約4千人にする必要があるという。年功序列の給与体系のため、ベテランが残って
新人が減れば、人件費は年900億円増える。
原口氏は23日の記者会見で、民間企業への出向者の拡大に取り組む姿勢を見せた。民間出向で
公務員数を減らし、新卒枠への影響を抑えるねらいだ。ただ、業績悪化に苦しむ民間企業に大量の
官僚を受け入れる余地は乏しい。
民間も含め、公務員の人事異動の柔軟化を目指す仙谷氏は、「早期退職勧奨は一つの手段としてある。
民間で言えば希望退職みたいな制度を作る必要もある」と、公務員の自発的退職を促す方針。
だが、「あっせんもなく、割り増しの退職金だけで辞めろというなら、再就職に有利な仕事ばかりをやる」
(経済産業省幹部)と、士気低下を懸念する見方もある。
[朝日新聞]2010年3月26日11時 43分
http://www.asahi.com/politics/update/0326/TKY201003260004.html