・ウミは広いな大きいな〜、月がのぼるし、日がしずむ〜♪
この歌には「戦争協力」の意味があるという説があります。本当でしょうか。
問題視されるのは、第3節です。「ウミニ オフネヲ ウカバシテ、イッテ ミタイナ、ヨソノ クニ」
という歌詞が、大日本帝国の海外進出への期待を、子どもたちに歌わせたのではないか、
というのです。
「ウミ」は1941(昭和16)年2月、国民学校1年生用の音楽教科書『ウタノホン 上』に
初めて掲載されました。作詞は童謡詩人の林柳波(1892〜1974)、作曲は井上武士
(1894〜1974)でした。林も井上も、ともに海とは無縁の群馬県の出身です。林が生まれ
育った沼田は山に囲まれて地平線が見えない場所です。
「ウミ」が作られたころ、日本は中国との戦争が泥沼化し、南方に目を向けていました。
前年9月、北部仏印(ベトナム北部)に進駐、41年の7月には南部へも兵を進めました。
南進論が唱えられ、国民が南方にさまざまな関心を抱いていたときです。
林は、当時の多くの作詞家同様、軍歌も作りました。「あゝ我が戦友」(37年)というヒット曲も
あります。文部省の教科書編集委員を務め、国策に協力する立場にありました。
でも、現代の研究者たちは林の「戦争協力」説に慎重です。戦時中の児童教育の研究で
知られる作家の山中恒さんは、「時代の流れを追ってゆくと、『ヨソノクニ』は南方を指している
ようにもみえる。でも……」と言って、「ウタノホン」の教師用手引書を見せてくれました。
いわば先生のためのアンチョコです。そこには、「ウミ」の第3節について「海国日本国民の
憧憬と意気とを歌ったものである」との解説があります。「海事思想とは、南方雄飛の意味
でしょうが、露骨に海外進出を強調しているわけではない。決め付けてしまうのはどうだろうか」
と山中さんは話します。
日本の近代音楽史を研究する戸ノ下達也さんも「国威発揚なら『日ガシズム』は変だ。むしろ
子どもの感性や想像力を養う意識がみられる」と言います。(抜粋)
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY201002040274.html ※前:
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1265353529/