岐阜薬科大(岐阜市)の原英彰教授(51)=神経科学=らのグループが、細胞の成長や
増殖に関与する遺伝子が統合失調症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの精神疾患の
発症に関係していることを突き止め、14日付の米国の科学誌プロスワンに発表した。
この遺伝子は「ヘパリン結合性上皮成長因子」(HB−EGF)と呼ばれる細胞増殖因子の一つ。
近年がんの研究で注目されている。
原教授はこの遺伝子を前脳で取り除いたマウスと、正常なマウスとを比べた。
その結果、この遺伝子のないマウスは統合失調症患者にみられる情報処理の障害が現れた。
また、社会性行動や記憶力の低下、異常に動き回るなどの行動障害のほか、ADHDの
特徴である注意力不足もみられた。この遺伝子が精神疾患の抑制に重要な役割を
果たしていると判断したとしている。
また、この遺伝子を取り除いたマウスは、神経細胞から放出されて別の神経細胞や
筋肉細胞に興奮や抑制の作用を引き起こす物質「脳内モノアミン」や、興奮の信号を
受け取る「樹状突起」が正常のマウスより2〜4割ほど少なかった。
原教授によると、精神疾患の発症にかかわる遺伝子はいくつか見つかっているが、
「これほど包括的に病態を反映している遺伝子は珍しい」という。「研究を進めれば、
精神疾患発症のメカニズム解明や新薬開発につながる」と話している。
*+*+ 中日新聞 2009/10/14[16:35:58] +*+*
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009101402000239.html