・男か女か。人生を左右する重大な決定が新生児医療の現場で揺らいでいる。
染色体やホルモンの異常により、約2000人に1人の割合で発生するとされる性分化疾患。
国立成育医療センター。性分化疾患の研究・治療で国内をリードする一人、堀川玲子・内分泌代謝科
医長は、センターが開所した02年から診察を続けている一人の子の成長がずっと気になっている。
その子は生後約1年で、地方のある大学病院から「陰茎(ペニス)の発達異常がある男児だが、男性
ホルモンをいくら投与しても大きくならない」と紹介されてきた。しかし、詳しく検査してみると染色体は
女性型のXXで、子宮や卵巣もちゃんと備わっていた。男性ホルモンの過剰分泌が原因で女性の陰核
(クリトリス)が陰茎のように肥大する病気と分かった。いわば、女の子が無理やり男の子にされようと
していたのだ。
両親と話し合い、性別と名前を女の子に変える法的手続きを取ることを決めた。家族は周囲にその
事実を知られぬよう、県内の別の市に転居した。堀川医師は今も定期診察でその子に会うが、言葉遣いや
様子は男っぽく、遊び相手も男の子ばかりという。「不必要で過剰な男性ホルモンを投与したからでは
ないか」と心配でならない。
「よく隠し通せたね」。IT技術者として働く真琴さん(25)=仮名=は時々、高校時代の女友達にそう言われる。
当時の真琴さんは男子生徒。本当のことを打ち明けられたのは卒業してからだった。「男女どちらかに
はっきり属していたら、友達をだますようなことをしなくても済んだのに」。
真琴さんの体には卵巣や子宮があるが、染色体は女性型と男性型が混在する「XX/XYモザイク型」。
小さな陰茎(ペニス)があったためか、両親は男性として出生届を出し、男の子用のおもちゃを買い与えた。
しかし成長するにつれ、男の子の輪に入りづらくなった。中性的な雰囲気があるのか、小学校では
「おとこおんな」といじめられた。(
>>2-10につづく)
http://mainichi.jp/life/today/news/20090929ddm013100134000c.html