グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区)が昨年2月、日教組の教育研究全国集会(教研集会)の
会場使用を拒否した問題で東京地裁は、プリンス側に約3億円の損害賠償の支払いなどを命じた。
今回の問題は、いったん契約を結びながら破棄したプリンス側の分が悪い。
日教組の損害賠償請求額を満額認めた判断に若干の疑問は残るものの、おおむね妥当な判決といえるだろう。
問題は、日教組が教研集会(全体集会)の会場を旅行会社を通じて探し、一昨年5月にプリンスと
契約を結んだことに始まる。プリンス側は、想定以上の右翼団体の街宣活動が予想されるとして同11月、契約解除を通告した。
日教組は会場使用を求めて裁判所に仮処分を申請した。東京高裁が会場使用を認める決定を出したが
プリンス側は従わず、全体集会は中止になった。
この裁判所の仮処分決定を無視したことについて判決は「司法制度を無視し、違法性は著しい」と厳しく断じた。
教職員の意見交換や交流の場としての教研集会の意義にも触れ、「法律上保護されるべきだ」と指摘した。
集会が受験シーズンと重なることから、周辺への影響を考えたというプリンス側の言い分も分からなくはない。
また日教組はかつての闘争路線から協調・柔軟路線に変わってきたとはいえ、最近の教研集会でも
一部組合員の中から、来賓に「帰れコール」が起きるなど旧来の体質が依然消えていない。
だが、「警察当局などと十分な打ち合わせをすることで混乱は防止できる」とした裁判所の仮処分の判断を尊重し、
集会の開催に協力すべきだったのではないか。
先ごろ広島市では、原爆の日の8月6日に予定された元航空幕僚長の講演会に対し、秋葉忠利市長が
「被爆者や遺族の悲しみを増す恐れ」を理由に、日程の変更を文書で申し入れるという問題が起きた。
主催者側は市長の申し入れを拒否し、講演会を予定通り開催するとしており、当然である。
市長名の文書には表現の自由を尊重するとのくだりもあるが、日程変更の申し入れは言論・集会の自由に
重大な制限を加えようとしたとされてもやむを得まい。
民主主義社会では、いかなる言論の自由も保障されねばならないことを改めて肝に銘じたい。
産經新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090730/trl0907300223000-n1.htm