臓器移植法改正をめぐる動向が注目を集める中、「『臓器移植法』改悪に反対する市民ネットワーク」は
6月24日、参院議員会館で勉強会を開いた。勉強会では、脳神経外科専門医の近藤孝医師が脳死判定
の在り方などについて講演。18日に衆院を通過したA案反対派の議員や市民らも、A案の問題点や
国会審議の在り方について意見を述べた。この中で、弁護士でもある社民党党首の福島瑞穂参院議員は、
A案では「法律用語ではない『家族』や『遺族』などの文言が使われている」と指摘、「A案には、あまりに
欠陥がある」と批判した。
近藤医師は脳死判定基準の「竹内基準」について、脳死を判定する上で「十分ではない」と指摘。また
竹内基準では、「脳死状態は絶対に慢性化することはない」と断言しているが、脳死状態の人が5年以上も
生きる「長期脳死」などの事例があるとして、「これが誤りであることは長期脳死の症例が示している」
と強調した。
国会審議の在り方を批判する意見も出た。C案提出者の阿部知子衆院議員(社民)は、「4案も出ていた
のに、審議時間が短かった」と指摘。さらに18日の本会議中、「必ず、A案に投票してください」「仮にA案が
否決された場合、その後の投票では棄権せず、反対票を必ず投じてください」などと記した「メモ」を、
A案提出者が回していたと明かし、「本会議場でこのようなメモが回されるのを見たことがない。
国会という場をはき違えているのではないか」と述べた。川条志嘉衆院議員(自民)も、「A案(賛成派)の
論理展開は強引だった」と批判。市民ネットワーク事務局の川見公子さんも、「(臓器移植法改正に関する)
審議をすべて傍聴したが、本当にひどかった。なぜ脳死が人の死なのか、納得のいく説明がなかった」
と述べた。>>2以下に続き
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/22743.html また、生命倫理の教育や研究に携わる大学教員の集まりである「生命倫理会議」の愼蒼健・東京理科大
大学院科学教育研究科准教授は、多くの政党が党議拘束を掛けなかったことに疑問を呈した。
愼准教授は、臓器移植の問題は個人の死生観にかかわることで、党議拘束を外すべき問題だとすること
で、「あたかも政治問題ではないかのようにしている」と指摘。しかし実際に法律が成立すれば、
「われわれはそれに拘束されることになる」と述べ、党議拘束を掛けずに採決に臨んだ政党の対応を
批判した。
A案賛成派が臓器移植に関するWHO(世界保健機関)の「指針」の内容を歪曲しているとの意見も出た。
阿部議員は、WHO指針で求めているのは渡航移植の禁止ではなく、正確には、臓器移植のために人を
誘拐したり、臓器を売買したりする動きを規制することだと指摘。川条議員や愼准教授も、
A案賛成派による WHOの指針の取り上げ方を批判した。
A案の「欠陥」を指摘する意見も出た。福島議員は、本人に拒否の意思がない場合、家族の同意で
臓器提供ができるとするA案では、「家族」や「遺族」などの文言が入っているが、これは「法律
用語ではない」と指摘。こうした文言では、具体的に誰を家族とするのか、家族間で意見が割れた
場合にどうするのかなどが明確でなく、「ものすごくトラブルの起きる法案だ」と述べた。
また、本人の意思確認の必要性を指摘する意見も相次いだ。
子どもの脳死判定基準などについて検討する「臨時子ども脳死・臓器移植調査会」の設置などを
盛り込んだ独自案の提出者の一人である川田龍平参院議員(無所属)は、独自案を「E案」とした
上で、「多くの議員に賛同してもらえるよう頑張っていきたい」と述べた。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/22743.html