記者の目:東京の妊婦死亡で医療界と行政に望む=清水健二
「妻が死をもって浮き彫りにした問題を、力を合わせて改善してほしい」。
脳出血を起こした36歳の妊婦が10月、東京都内の8病院に受け入れを断られた末に
死亡した問題で、涙をこらえて気丈に語った夫(36)の姿が忘れられない。
その言葉にどう応えればいいのか、厚生労働省の担当記者として自分なりに考えてきた。
いくつかの問題点と解決策は朝刊の連載「医療クライシス」(12月9日から3回、
東京、大阪、中部本社版)で示したつもりだが、取材して強く感じるのは、産科救急医療の危機的状況が、
現場の医療関係者以外に十分に伝わっていないことだ。不祥事を隠すな、という意味ではなく、
再発防止策を皆で考えるために、一定の「受け入れ拒否」事案を報告・開示する制度の創設を求めたい。
私は今回のケースに、現在の産科救急医療体制の限界を感じている。
日本の乳児死亡率は1000人当たり2・6人(06年)と世界一低い。経済協力開発機構
(OECD)加盟国中最低レベルの医師数でそれを成し遂げたのは、産科医同士が緊密な連携を取り、
独自の救急ネットワークを作ってきた努力のたまものと言っていい。
仕組みは地域で異なるが、東京では都内を8ブロックに分け、命の危険がある患者は
各ブロックの総合周産期母子医療センターが受け入れ、無理な場合はセンターが別ブロックの病院を探す取り決めだった。
「最後のとりで」の総合センターが受け入れを断ってもいいことになるが、「満床で無理に受け入れるより、
空いている施設を使った方が安全」という考え方は、それなりの合理性がある。
以下続きます
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20081218k0000m070149000c.html