新型インフルエンザウイルスの蔓延(まんえん)やバイオテロの被害拡大を防止せよ――。
7月の北海道洞爺湖サミットに向け、国立感染症研究所(感染研、東京都)が
道内の薬局や消防当局と連携し、データ収集と分析を始めている。
販売された薬や救急出動の内容から、万一の事態の発生を早期に察知することが目的だ。
いわば「目に見えない敵との戦い」が静かに進行している。
新型インフルエンザが広がったり、バイオテロが発生したりした場合、
最初は発熱や嘔吐(おうと)、下痢といった初期症状が出ることが予想される。
こうした症状から、市民や医療機関が風邪と勘違いし、被害が拡大しかねない。
今回の措置は、広くデータを集めることで、発生の事態を正確に把握するのが目的だ。
感染研はまず3月から、道内に約1800ある調剤薬局のうち、札幌、小樽両市内の21薬局で
処方される薬のデータ収集を始めた。具体的には解熱鎮痛剤や総合感冒薬、抗生物質、
インフルエンザ治療薬「タミフル」などの処方量だ。
データ収集の対象となる薬局は、サミット会場の胆振支庁洞爺湖町に近い室蘭市や
新千歳空港がある千歳市にも広げる。さらに北海道薬剤師会に対して、道内のできるだけ多くの
調剤薬局からのデータ提供を求める意向だ。一般薬局での感冒薬や解熱剤などの
販売データについても、調査会社から提供してもらう。
そしてある特定の薬が集中的に処方・販売された場合、医療機関に症例調査を促す。
その結果、新型インフルエンザの発生が確認されれば、5月に施行された改正感染症法を根拠に、
知事が患者の外出自粛や強制入院を求める。(中略)
関係者によると、00年の沖縄・九州サミットでも一部地域で薬の処方データの入手・分析は
されたが、今回のような広範囲で様々なデータを集めるのは異例だという。
感染研の大日(おおくさ)康史・主任研究官は「新型インフルエンザでもバイオテロでも、
できるだけ早期に事態を察知し、被害拡大を食い止める必要がある。今回のデータ収集と分析は、
そのための有効な手段になるはずだ」と話している。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000000806120005