戦後初めて日本銀行総裁のポストが空席になるという異例の事態に対し19日、日銀内部に失望感が広が
り、市場関係者らからは懸念の声も相次いだ。米国発の金融危機が深刻さを増し、月例経済報告の下方修
正で国内景気に不透明感が漂うなか、「金融の司令塔が空席でいいのか」という見方で共通する。海外メ
ディアも厳しい視線を向けている。
「覚悟はしていたが、本当に空席になるとは」と日銀幹部は失望を隠さない。日銀内は早くから元財務
事務次官の武藤敏郎副総裁の昇格を支持する声でまとまっており、「政局に利用しないで」とOBらが政
府・与党や民主党に働きかけた。
当初は、武藤氏昇格に反対する民主党への反発が強かったが、武藤氏の次にも元大蔵事務次官を総裁候
補として提案したことで政府への不信感も増した。日銀内には「与野党がまとまる気がしない。当面は総
裁代行を支えるしかない」との声が出ている。
「国際社会に醜態をさらした」。三菱UFJ証券の藤戸則弘・投資情報部長は手厳しい。「米国経済が
危機的な状況に陥り、米連邦準備制度理事会(FRB)は連続利下げなど、全力投球で混乱回避に努めて
いる。そのさなかの日銀総裁不在は考えられない」と言う。
株式市場でのさらなる「日本売り」懸念は絶えない。「総裁人事すら決められない政治の不安定さは、
海外投資家の日本離れを強めるリスクを強めた」と、HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは懸念
する。
4月には主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が米国で開かれるが、「総裁代行では、各国ト
ップと真剣な議論ができるのか不安だ」とBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは指摘する。
海外の視線も厳しい。英紙タイムズ(電子版)は「日銀の危機」と表現。「異様さを深める総裁選びは
日本の国際的な評価を落としつつある」とした。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)も「日銀と日
本政府の信認を傷つける」と指摘。「世界の金融危機が深まる時期に総裁選びが失敗を重ねれば、日本だ
けの問題で片づけられなくなる」と警告した。(2以降に続く)
ソース
asahi.com
http://www.asahi.com/business/update/0319/TKY200803190286.html