有機リン系殺虫剤のメタミドホスが混入した中国製冷凍ギョーザを食べ、千葉県や兵庫県の計10人が
中毒を起こした事件で、中国公安省が初めて記者会見を開いた。
しかし、中国側捜査当局である公安省の公式見解は「中国国内でメタミドホスが入った可能性は極めて低い」
というもので、日本側の判断とは真っ向から対立した。
日本の警察庁はすでに、
(1)検出されたメタミドホスは不純物が多く含まれ、日本で流通している高純度のものとは違う
(2)工場内で密封された包装の内側からも検出された−などの事実から「中国国内で入った可能性が高い」との見方を示している。
事件の解決には、日中間の緊密な協力が欠かせない。これは刑事事件の捜査であり、真実はひとつであるはずだ。
双方は改めて客観的な捜査資料や情報を出し合い、事件の解明に向けて歩み寄る必要がある。
忘れてならないのは、日本にとっては生命の危険もあった食の安全にかかわる深刻な問題であり、
中国にとっても自国の輸出食品全体の信頼性が問われる問題だということだ。
真相究明ができないままでは、日本の消費者の不安は解消されず、中国にとってもマイナスでしかない。
「故意による犯行」という点では双方の見解は一致している。中国国家品質監督検査検疫総局の副総局長も2月6日、
「日中関係の発展を望まない少数の分子が過激な手段に出たのかもしれない」と語っている。
だが、その後の中国は、「われわれこそ事件の被害者」との態度に一変してしまった。
今回の記者会見でも日本側の物証提供をめぐって中国公安省は「深い遺憾」を表明した。
これに対し、警察庁の吉村博人長官は「中国側に役立つ資料はすべて渡している。
『遺憾』といわれるのは理解できない」と強い口調で反論している。
これでは捜査上の協力や連携など到底望めない。
日本としては、今後も中国に対し、粘り強く捜査への協力を求めていくべきだろう。
中国側もこうしたかたくなな態度を改める必要がある。曖昧(あいまい)な決着は許されない。
ましてや捜査に政治的思惑を持ち込むのは論外である。
産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080229/crm0802290311008-n1.htm