「会社は株主だけのものか?─企業買収防衛策・外為法制度改正・ガバナンス─」北畑事務次官〔1月25日講演録〕(PDF形式:347KB)
http://www.meti.go.jp/topic/data/80208aj.pdf 会社法では、会社は株主のものです。会社法の大枠は、国際スタンダードで出来上がっていて、これを変更することはできません。
グローバル経済のもとで、企業が国際的な活動をしているのですから、適当とも思いません。
しかし、会社は株主だけのものではなく、社長以下の従業員、あるいは取引先、地域住民を含めた全体の利害関係人のものであるという実態があります。
そういう議論をしてくれたのがブルドックソース事件での東京高裁です。
東京高裁判決では、「株式会社は理念的には企業価値を可能な限り最大化して、株主に分配するための営利組織であるが、同時に、
そのような株式会社も単独で営利追求活動ができるわけではなく、一個の社会的存在であり、対内的には従業員を抱え、対外的には取引先、
消費者等との経済的な活動を通じて利益を獲得している存在であることは明らかであるから、従業員、
取引先など多種多様な利害関係人(ステークホルダー)との不可分な関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきものであり、
企業価値について、専ら株主利益のみを考慮する考え方には限界がある」といっています。
これが日本の企業の実態に近いので、このような考え方に基づいて運用面で工夫していくべきではないかと思っています。
最後に、日本では、会社の労働者のことを「社員」と言います。ただし、商法で「社員」とは出資者のことだと書いてあります。
留学した後輩に、この辺の事情を話して、では、英語で「社員」はどう言うのかといったら、「やはりそれは株主になってしまいますね」と言うのです。
要するに今のステークホルダー論が登場する前から、日本では労働者を「社員」と言い、その中から上がってきた人を「社長」と呼んで、
会社は、そういう人たちのものだと考えていたのだと思います。
したがって、会社はだれのものかといったら、二重の意味で「社員」のものです。
つまり出資者のものであると同時に、会社を構成している社長以下の働いている人のものだというのが実体的には正しいのではないかと思います。