文化庁が平成7年度から毎年行っている「国語に関する世論調査」の18年度の結果報告が発表された。
情報化時代における漢字使用や、慣用句等の意味の理解や使用に関する意識などを調査し、
これを国語施策を進めるための参考にしようというものである。
慣用句では「上を下への大騒ぎ」を「上や下への大騒ぎ」に、「熱にうかされる」を「熱にうなされる」に
−など間違った形で覚えている人の方が多かった。今後は国語の基礎力の劣化を直視した国語政策が必要だ。
漢字については、常用漢字表の存在さえ知らぬ人が44・7%もいたことに驚かされた。その事実とともに、
表内字の「遵」や「勺」が使われていないと思うとした人が6割を超えた一方、表外字の「誰」「奈」「頃」「岡」は
8割以上の人がよく使われていると思うと答えるなど、常用漢字表がもはや国民の文字生活の実態と
懸け離れてしまっていることがうかがえた。
表記の仕方では、ワープロやパソコンでは「憂鬱(ゆううつ)」だが、手書きでは「憂うつ」が多いという
結果が出た。これは繁画字が多く省かれた戦後の漢字政策を反映していよう。繁画字ほど記憶しやすいという
研究結果もあるので、参考にすべきである。また、たとえ手書きでも、私的なメモや日記ならともかく、
手紙など改まった場面では「憂うつ」のような表記が望ましくないことはいうまでもない。
漢字熟語など本来は漢字で書かれるべき語は漢字で書くという正書法意識を浸透させる国語政策が望まれる。
常用漢字表の見直しは22年2月ごろに文化審議会の答申が出る見込みという。
面白いのは30代までは「漢字使用の拡大」を支持し、40代以上では逆に「漢字制限が望ましい」と
考える人の方が多いことだ。文書作成にパソコンを利用する人口はこれからますます増えよう。
見直しに当たっては、今後のそうした文書作成環境のことも考慮に入れることが肝要だ。
調査結果を生かして、交ぜ書きなど国語表記を著しく劣化させた現行常用漢字表の轍を踏まぬよう、
大胆に十分な字種を取り入れたい。読み書き同時学習は時代に合わない。
読み先習の漢字学習に切り替えれば、字種拡大を躊躇する理由はなくなろう。
産經新聞
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070909/shc070909000.htm