【社説】 安倍外交 「価値観」もほどほどに インド核開発に首脳会談で苦言を呈することこそ「主張する外交」にふさわしい

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1うし☆すたφ ★
★安倍外交 「価値観」もほどほどに

 安倍晋三首相がインド国会での演説で、日米豪印四カ国の連携強化を訴えた。
価値観を共有する各国との結束は重要だ。ただ、度が過ぎると、他国に誤ったメッセージを
送ることになりはしないか。

 首相は19日からインドネシア、インド、マレーシア三カ国外遊の旅に出掛けている。
参院選惨敗で政権の混乱が続く折から、与党内には「外国に行っている場合か」との不満もあった。
 首相としては「主張する外交」の柱と位置づける「価値観外交」の推進によって、
一定の成果を挙げたいとの切実な思いがあったようだ。(中略)

 自著「美しい国へ」の中でも、首相は日米豪印の連携に向け、日本のリーダーシップの必要性を強調している。
今年3月には日豪首脳会談で「安全保障協力に関する共同宣言」に署名した。
まさに自らの手で、四カ国の枠組みをがっちり固めているつもりなのだろう。

 しかし、考えておかなくてはいけないのは、その副作用だ。日本が米豪印と結束すればするほど、
例えば中国は「包囲網」を築かれていると警戒感を強めることになる。アジア諸国への慎重な配慮は欠かせない。
 米豪印も同様の理由から、四カ国の連携が突出することには慎重だ。ライス米国務長官は先に訪米した
小池百合子防衛相に「中国に思いがけないシグナルを送る可能性がある」と、ブレーキをかけたほどだ。

 首相が独り相撲を取っているようにも見える。安全保障、経済にとどまらず、温暖化対策など
地球レベルの危機を考えれば、必要なのはきな臭い包囲網ではなく、共通のテーブルだろう。

 インド訪問で首相が力点を置くべきは、唯一の被爆国としての日本の立場である。
インドが核拡散防止条約(NPT)に加盟しないまま、核開発競争につながりかねない
米国との原子力協力協定に合意し、隣国パキスタンを刺激している。
首脳会談で苦言を呈することこそ「主張する外交」にふさわしい。

中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2007082302043113.html