【狂牛病】 牛肉の安全を再考する 来年、全頭検査が中止にt…山内一也・東京大学名誉教授
★牛肉の安全を再考する〜来年、全頭検査が中止に 山内 一也=東京大学 名誉教授
BSEに対する監視体制が徐々に緩められている。
2006年7月、米国産牛肉の輸入が再開された。以来、農林水産省と厚生労働省が、
日本向けに輸出する牛肉を処理する米国の施設28か所に対して、査察を行ってきた。
「BSE(牛海綿状脳症)にかかわる危険部位を確実に除去し、安全性を保持しているか」を
確認するためである。そして両省は2007年5月13日、「対日輸出に影響するような
事象は起きていない」ことを確認し、この査察を終了したと発表した。
また厚労省は、「国産牛の全頭検査にかかる費用の全額補助」を
「2008年7月に予定通り打ち切る」方針を、今年5月にあらためて示した。
同省は2005年8月以来、3年間の期限付で補助を実施してきた。
はたして、牛肉の安全は本当に確保されているのか?
現状と課題を東大名誉教授の農学博士、山内一也氏が語る。
nikkei BPnet
http://event.media.yahoo.co.jp/nikkeibp/20070711-00000000-nkbp-bus_all.html 続きは
>>2-5 >>6-9あたりに
>>1の続き
●米国産牛肉は全箱検査から抜き打ち検査へ
これまで日本は、米国から輸入する牛肉を全箱検査してきた。
しかし、対日牛肉処理施設への査察を完了したことに伴い、厚労省は全箱検査を取りやめ、
抜き取り検査に移行するよう関係機関に通知している。
輸入業者の負担は軽減し、米国産牛肉の輸入量が増大する可能性が高い。
抜き取り検査への移行は科学的見地からではなく、行政対応の問題である。
なぜなら、輸入した処理済み牛肉を全箱検査したからといって、100%安全が保たれるという
確証はなかったからだ。特定危険部位の脳や脊髄などの組織の一部が混入していても
肉眼では分からない。食肉処理施設において、しっかりした安全確保の態勢を取ることが
大事なのである。そしてそれを保証するのは行政の責任である。
もちろん、抜き打ち検査になればリスクは増大する、とも考えられる。
だが、そもそも全箱検査をしている今も、リスクはあるのである。
2005年12月の最初の輸入再開直後(2006年1月)に、危険部位である背骨の混入が見つかり、
再び輸入停止となった。このようなあまりにもお粗末なミスならば肉眼でも分かる。
しかし、2006年7月の輸入再開後、さすがにそうしたミスは発見されていない。
28か所の米国処理施設の査察も行った。その結果、安全確保の態勢がとられていると
厚労相は判断したのだろう。しかし、とおり一遍の査察で、はたしてどれだけ実態が
分かるのだろうか。(続く)
>>2の続き
●全頭検査こそが最も科学的合理性のある対策
もう1つの気がかりは2008年7月、国産牛に対する全頭検査の存続が危機に陥ることである。
厚労省は5月25日までに、「当初の予定通り、20か月齢以下の国産牛のBSE検査に関する
全額補助を2008年7月に打ち切る」ことを改めて発表した。全額補助打ち切りによって
生後20か月以下の若い牛の検査をやめることになれば、日本で初めてBSE感染の牛が
発見された2001年以来続けてきた全頭検査が、終わることになる。
なぜ「月齢20か月」という線引きが出てきたのか? 理由の1つは「これまでに見つかった
感染牛の中で最も若かった牛が生後21か月だった」ということ。科学的に決めたものではない。
BSE発病のメカニズムはほとんど分かっていない。単に現在の検査法の検出限界がこの程度だろう
という推測による。しかも、線引きが提案された理由は、米国産牛肉輸入を可能にするための
条件設定だったのである。
日本は2001年10月から肉骨粉の利用を全面的に禁止した。
そのため、年がたつにしたがい、餌は安全なものになってきたはずだ。
そこで、日本の牛の場合は、ここ20か月以内に生まれた牛ならば感染の可能性はきわめて
少ないと考えたにすぎない。
EUは2001年1月、「屠畜場で30か月齢以上の牛すべてを検査し、陽性のものは食卓へまわさない」
措置を取った。30か月齢で線引きしたのは、30か月齢以下のBSEは非常に少ないこと、
また30か月がちょうど歯並びが変わる時期であるため、年齢が容易に推定できることを
利用したにすぎない。科学的に決めたものではない。(続く)
スレ立て主が…w
>>3の続き
日本でも、BSE感染牛が最初に発見された2001年当初は、EUにならって30か月齢以上の
検査を考えていた。しかし、消費者からの強い要望を受けて、政治的判断で、全月齢を
対象とした全頭検査を始めたのだ。これにより、月齢を判別する際に起こる混乱を防ぎ、
また、特定危険部位の除去が不完全になる問題も回避できた。検査陽性の牛は焼却され、
まったく食卓にまわらないからだ。 そして何より、全頭検査を行ったからこそ、2003年10月、
30か月齢以下の若い牛(23か月齢)からも感染牛を発見できたのである。
以上のメリットを、日本の全頭検査は示した。それゆえに、プリオン病研究の世界的権威である
スタンレイ・B・プルシナー氏は「全頭検査こそが、今考えられる最も科学的合理性を持った対応法だ」
と明言している。私もまったく同感だ。
来年、厚労省が全額補助を打ち切っても、「自前で予算を立て全頭検査を継続する」と
明らかにしている都道府県がある。したがって、ただちに全国で全頭検査終了とはならないだろう。
だが、消費者の不安が増える可能性がある。市場には検査済みと未検査の国産牛肉、
それに輸入牛肉が出回ることになるのだ。
日本の場合には20か月以下の牛への検査を止めても、「20か月以下の牛を検査してもBSE感染牛が
発見される可能性は低い」とする食品安全委員会の報告のように、リスクは非常に小さいと考えて
よいだろう。しかし、最近、自然発生型と見られる非定型BSEの牛が発見され、注目されている。
日本の23か月齢の牛もその1例だ。これらは大部分が年をとった牛で見つかっているが、若い牛が
発症しないかどうかは分からない。 非定型BSEを考えれば、月齢を問わず検査することが科学的には望ましい。
一方で、見つかる可能性がきわめて少ない若い牛の検査は税金の無駄遣いとの意見がある。(続く)
6 :
うし☆すたφ ★:2007/07/14(土) 08:29:20 ID:???0
>>5の続き
●本当に「全頭検査は金がかかる」のか?
ここに厚労省の食品安全部監視安全課がまとめた「BSE検査キット整備費」についての調査結果がある。
これまでに行った全頭検査でどれほどのコストがかかったかを示した統計だ。
これを見ると、20か月齢以下の牛を検査対象からはずしたところで、経済的な負担が大きく変わるとは言えない。
2003年度には約111万頭の牛を検査。かかった費用は約30億円だった。そのうち、20か月齢以下の
牛が占めたコストの割合は12%。金額にして約3億6000万円だった。翌2004年度は約126万頭を検査。
20か月齢以下の牛の検査にかかったコストはやはり全体の12%(約3億2000万円)。
2005年度は約163万頭を検査し、うち、20か月齢以下の牛の検査にかかったコストは全体の13%(約2億9000万円)だった。
20か月齢以下の牛の検査にかかる費用は全体の1割強でしかない。
しかも、月齢によって「検査する、しない」を判断することになれば、月齢を調査する新たな作業負担と
コストが生じるのだ。この金額を無駄と考えるか、それとも受け入れるかは消費者が判断するべきである。
日本の消費者がBSEに関して深い理解があることを、日本でのリスクコミュニケーションに参加した
欧米の多くの専門家が認めている。
BSEあるいはプリオン病は、まだ分かっていないことがたくさんある病気である。
とは言え、プリオン病の病原体はウイルスと異なり、熱を加えても不活化しない。
毒物と違って、薄めれば人体への影響が低減するようなものでもない。
人がBSE感染牛を食べることによってプリオン病を発症すれば、確実に死に至る。
しかも、輸血などでほかの人に感染を広げることも問題になっている。
過剰にヒステリックになる必要はないが、このような側面も認識しなければならない。
消費者が正しい理解で行政判断を動かし、安全を確保する。それが今できる最良の防衛策と言えるだろう。
以上