社会保険庁改革関連法案の成立で同庁は解体され、公的年金に関する業務は2010年1月に
発足する「日本年金機構」が引き継ぐ。一連の年金記録騒動に対して責任を負うべき
社保庁を解体するのは当然だ。ここ何年間も同庁に不祥事が続いたことを考えると、遅すぎたくらいだ。
社保庁は年金運営組織として不適格だと国民の多くは感じている。
新しい組織に衣替えするだけでは、失墜した信頼を取り戻すことはおぼつかない。
規律高い組織として再生させるために、日本年金機構に魂を入れる作業に政府は全力を挙げるべきだ。
また社保庁職員は無条件で機構に移れるわけではないことを肝に銘じてほしい。
保険料や納付記録は払った国民のものという、あたり前のことさえ理解しない職員は
リストラされることを覚悟すべきである。
機構発足までの間に、厚生労働省や社保庁をはじめ年金行政に携わる人がやるべきことは多い。
まず、宙に浮いた5000万件の年金記録の持ち主を愚直に突き止める作業だ。
すでに年金を受け取っている高齢者の分を優先して取り組むとともに、
現役世代に対しても把握している加入歴を役所側からわかりやすく伝え、本人の確認を求めることが必要だ。
給付漏れの時効が撤廃されることで年金給付の事務量も増える。
今後も大勢の年金生活者が各地の社会保険事務所に押し寄せるだろう。
できるものは民間委託し、効率よく「接客」にあたってほしい。
厳格な守秘義務を課すのは当然だし、窓口対応は親切丁寧を第一とすべきだ。
もともと社保庁解体の第一の目的は改善が遅れている年金保険料の納付率を高めることだった。
記録漏れへの国民の憤りがこれだけ高じていることは、徴収業務に強い逆風だ。
だからといって手は緩められない。債権回収に実績を持つ民間企業に委託するなど、手を尽くすべきだ。
社保庁から年金機構に移る職員は真にやる気のある人だけを選ばなければ国民は納得しない。
組織を挙げての怠慢が今回の問題の原因であることが明らかだからだ。
29日、国家公務員にボーナスが支給された。多くの社保庁職員は一部を国庫に返納するとみられるが、
それが免罪符にならないのは当然である。
日経新聞
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20070629AS1K2900229062007.html