去る4月25日、都内で、あるパネルディスカッションが開かれた。出席者は石弘光元政府税調
会長、香西泰現政府税調会長、そして司会を務めたのがなんと津島雄二自民党税調会長だ。
石さんは責任のある立場を降りたものだから、言いたい放題。「経済成長や歳出削減だけでは
財政再建はできない」と増税するしかないことを訴えた。
石さんは小泉内各時代の政府税調会長として、3年間にわたる税調での審議の成果である中
期答申を昨年秋に発表しようとして、官邸からの突然の要請で封印されてしまった。
安倍内閣の発足直前に税制の抜本改革案を打ち出すわけにはいかなかったのだろう。なにし
ろ、中期答申には、扶養控除・配偶者控除・給与所得控除など人的控除の圧縮と消費税率の
アップというサラリーマン狙い撃ちの大増税が含まれていたからだ。
政権交代前には言えない内容だったのだが、それでは安倍内閣が増税とは違う路線に転換し
たのかと言えばそうではない。
なぜかというと、安倍さん自身が選任した現政府税調会長の香西さんもパネルディスカッション
でこう発言したからだ。「成長だけでミラクルのようなことが起きるのは、確率ゼロではないが、
政策としては中道を歩んでいくしかない」。
安倍政権はもともと「上げ潮路線」という政策を打ち出していた。高めの経済成長を続けていけ
ば、自然増収によって、それほどの増税は必要なくなるという考え方だった。
ところが香西会長は上げ潮路線を否定し、「成長だけでミラクルが起きることを期待するのでは
なく」、やっぱり増税が必要だと遠回しに指摘したのだ。
さらに、驚いたことに司会役の津島党税調会長まで「我々の考えに大きな違いはない」と語っ
たのだ。これは極めて重要な発言である。
なぜなら、津島さんは政治家であり、参議院選前に増税を打ち出したら大変なことになること
は百も承知だ。その津島さんが増税路線を打ち出した二人を前に「大きな違いはない」と賛意
を示したのだ。 (以上抜粋。全文は
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/85/ )